一見ストイックな生き方は、実は常に他人を思いやる心から生まれていた。編集者・記者として、さらに養女として20年間を共に過ごした斎藤明美さんが、2024年の今年、生誕100年となる大女優の生き方を綴る。
電話をかけることは、相手の「時間を奪う」こと
これは確か、高峰が82歳のときに言った言葉である。
ある午後、彼女がふと言った、「安野先生お元気かしら……」。「安野先生」とは先般他界された安野光雅画伯のことである。氏は昔から高峰の大ファンで彼女の著書の装丁は必ず手掛けてくれた。高峰もまた深く敬愛していた、旧知の間柄である。
私は言った、
「電話してみれば?」。
「いいえ。あんな忙しい方に電話なんかしちゃいけません」
「でもかあちゃん(高峰)からの電話なら、先生喜ぶと思うよ」
「いいえ、電話はしません」
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