会社を破綻処理しなかったことに元凶がある

経営側は、発行済み株式の4割を保有する半導体大手キオクシアホールディングスの株式売却で株主への利益還元を行うことでファンド側の理解を得て、分割した新会社を上場させることで、海外ファンドの呪縛から解き放たれようとしていると見られる。どれだけ株主還元するかが、ファンド側との条件闘争のような様相を呈しており、エレベーター事業や照明事業の売却でその利益を株主還元に回すとしている。

なぜ、ここまで東芝はボロボロになったのか。

会社を破綻処理せず、形の上で存続させることにこだわったことが大きな要因だろう。粉飾決算と子会社だった米ウェスティングハウスの巨額損失が表面化した2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない。東芝メディカルシステムズのキヤノンへの売却を始め、優良な事業の売却で辻褄を合わせ、会社を存続させることに終始したことから、事業の多くを切り売りするハメになった。破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。

極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった。

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存続を支えていた経産省の責任も大きい

東芝の経営者が会社の形上の存続にこだわったのは、破綻処理すれば自身の責任が問われることが大きかったが、裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい。

ウェスティングハウスの買収は、経済産業省の原子力発電政策の一環として、いわば「国策」で進められていたことは明らか。2015年に発覚する粉飾決算も、リーマンショック時に経営危機に陥っていた東芝を経産省など霞が関が「救済」していたことが遠因になっている。事実上、破綻していたものを存続させるためのやりくりのひとつが粉飾決算だったと見られている。これも、国の原子力事業を担ってきた東芝に対する経産省の「意思」が反映されていたと見ていい。

その後、モノ言う株主の排除に向けて経産省の関係者が「介入」していたと見られる問題が発覚し、米国メディアなどでも報じられたが、それも、原子力事業へのファンドなどへの関与を回避したい経産省の思いがあったと見られている。