ニュー・ノーマルのなかでのマーケティング

コロナ禍が私たちにもたらしたニュー・ノーマルとは、フタを開けてみれば、ひとつの定常状態ではなかった。感染拡大の波が寄せては返すたび、製品やサービスの企画、プロモーションや営業といったマーケティングの各種の領域において、新しい活動が求められる。マーケティングの前提が次々に変わっていくなか、俊敏に変化に対応することが日常となってしまい、もうすっかり慣れてしまったという方も少なくないだろう。

ニュー・ノーマルのなかでのマーケティングでは、予測や計画の正確さを求めていると、いつまでたっても行動を起こせないということになりかねない。間違いのない予測や計画を手にしたくとも、その前提が次々に置き換わっていくからである。

行動することから活路は開かれる

このような日々の状況に、どう対応するか。長期の巣ごもりが可能な蓄えがある組織や個人であれば、嵐が去るのを待ち、動かず耐えるという選択もありえる。だがそうした余裕がない場合は、置かれた状況で当面できることを見いだし、素早く新しい行動を始めていくしかない。そして、始めた行動の結果からフィードバックを得て、変化する状況をつかみ、さらなる新たな行動に着手していけば、予測や計画の前提が次々に置き換わるなかでも、よりよく行動を続けていくことができる。

写真=PR TIMES/モスフードサービス
SDGs的取り組みを店舗設計や運営に導入したモスバーガー原宿表参道店(2021年12月15日オープン)

スタンフォード大学経営大学院のチャールズ・A・教授と、ハーバードビジネススクールのマイケル・L・タッシュマン名誉教授は、企業が成功を維持し成長を続けるためには、新規事業と既存事業の両方の成功が必要だとする「両利きの経営」という概念を提唱している。(C. A. オライリー 、M. L. タッシュマン『両利きの経営』東洋経済新報社、2019年)。ここで、新規事業に必要となるのが「知の探索」であり、既存事業に必要となるのが「知の探求」である。

ビジネスの前提条件がころころ変わるニュー・ノーマルの状況下では、このうちの「知の探索」的な活動を、チョロチョロと動き回るなかで進めていくことからマーケティングの活路が生まれてくる。ニュー・ノーマルのなかでは、新規事業に向いた組織や個人の活躍の場が広がる