ラポールの形成では、共通点を探すのも重要なこと。あまりよく知らない人とでも、共通点があるとわかったとたんに、打ち解けた話ができるようになるという経験は、誰しも持っているものだと思います。これは、簡単ですぐに使える方法です。

例えば、ジャズが好きな男性がいたとします。自分もジャズが好きであれば、彼が好きなミュージシャンや曲名などをあらかじめ調べておきます。

対話の上ではまず、音楽の話に持っていきます。「何の曲が好きですか?」という質問は、どちらからともなく出るでしょう。

そのときに、「ちょっと待って。ここでゲームをしましょう」などと振り、お互い、白紙に自分の好きな曲の名前を書いて、伏せておくのです。そして、同時にその紙を表に返す。もし、ここで同じ曲名が書いてあったら、一気に心理的な距離が縮まります。

子供だましみたいな手ですが、その有用性は学術的にも明らかにされています。

相手の趣味を事前に調べたことは、もちろん黙っておきましょう。

「自分の得」を犠牲にしない

またリアクションも、ラポールの形成では欠かせません。

中野信子『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)

一緒に笑ってあげたり、怒ってあげたりと、同じ仕草を、気づかれないようにやってみたりするのです。すると相手は、親近感を強くしていきます。

ちなみに、相手の行動を真似るというこの行動は、心理学では「ミラーリング」と呼ばれています。

ラポールの形成のために、Yさんはこのような工夫をしています。

まずは、相手をすっかりいい気分にさせて、自分の言うことを聞いてくれやすいようにしておきます。その裏で、自分が誘導したい目的地に話を持っていく交通整理を、ちゃっかり進めているわけです。

実に老獪ろうかいなお爺様ですね!

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