中国人ではなく日本人が占うが…
占い店の客は、日本人の若い女性が多く、占い師も基本的に日本人である。
中華街と占い店との直接的な関係は乏しく、この占いブームがいつまで続くかはわからないが、横浜中華街を訪れた際に占い店にも立ち寄るというのが、若者の間で流行っている。
インターネット上では、関帝廟や媽祖廟は横浜中華街のパワースポットであると書かれ、横浜中華街の中にある占い館で、どこが当たるかというランキングなどが評判になっている。
占い店の勢いはコロナでも衰えない
2020年以降、コロナ禍の影響で、横浜中華街の来訪者が大幅に減少し、倒産に追い込まれる店舗も増えていった。このような状況下で、新たに飲食店を開業しようとする例は減少したが、占い店の開業は勢いが衰えない。
横浜中華街発展会の高橋伸昌理事長は、横浜中華街に占い店が多い理由について、私に次のように説明した。
横浜中華街には10基の牌楼があり、関帝廟、媽祖廟もあります。横浜中華街は「風水思想で守られた街」です。風水思想と占いは、つながっているとみなされているようです。中華街と占いの組み合わせは、今の時代に合っているのかもしれません。
水族館、寿司屋…増加する「非中国的」な店舗
このほか横浜中華街には、これまでなかったような「非中国的」な店舗が増加している。
2004年、お笑いで有名な吉本興業のプロデュースにより、中華街大通り沿いに「よしもとおもしろ水族館」が開館した。
2013年に「ヨコハマおもしろ水族館」と改称し、約400種、1万匹の魚が展示された(しかし2021年11月23日に閉館した)。
また2011年3月には、「すしざんまい横浜中華街東門店」が進出した(オープンして1週間後、東日本大震災が起こった)。「24時間年中無休」が「すしざんまい」のウリで、近隣のオフィスに勤めるビジネスマンや海外からの観光客などもターゲットに、中華街大通りに進出したのだ。
世界各地の中華街で進む多様化
もともとこの場所には、いかにも中華街らしい中国食品・民芸品の販売店「萬順行」があった。中華街大通りへの「すしざんまい」の進出に対して、萬珍樓社長(当時)の林兼正は「中華街には、昔からすし屋が何店か営業しているので、さほど違和感はありません」と述べている(林兼正、2014年、96頁)。
海外の各地のチャイナタウンを見ていると、横浜中華街におけるこうした中国料理店以外の店の増加は、至極当然といえる現象である。
チャイナタウンは華僑が形成したエスニックタウンであるが、時間とともに変容していく。海外各地のチャイナタウンは、どこも多文化、多国籍化が進んでいる。新たな移民やホスト社会(移民にとって受け入れる側の社会)の資本などが流入し、変容を続けていくのだ。