スポーツ大会というより政治案件になってしまった
北京で開かれる冬季オリンピックの開幕まであとわずかになった。
出場する日本代表選手が着々と決まってはいるものの、スポーツイベントとしての大会への関心よりも、政治的な動きのほうが活発なようにみえる。これまでに米国、英国、オーストラリア、カナダといった国々が「外交的ボイコット」を表明した。日本も政府関係者の派遣を取りやめることを決めている。
米国をはじめとする民主主義国家は、中国国内で起きている人権侵害問題を提起し、北京での五輪開催に厳しい姿勢を取っている。対する中国政府は「五輪への招待を受けていない状況下での『外交的ボイコット』は完全に自意識過剰」とかみつくなど、あの手この手で対抗しているが、開幕まで間近となる今、中国が期待しているようには物事は進まず、政治的、外交的優位性を誇示するにも切羽詰まっている局面にあるようだ。
新疆ウイグル自治区の少数民族への対応を問題視
「外交的ボイコット」という言葉は今回の北京冬季五輪で初めてお目見えした。初出とみられるのは2021年5月、ナンシー・ペロシ米下院議長が、新疆ウイグル自治区の少数民族に対する人権侵害問題を理由に「北京冬季五輪を各国首脳は欠席するべき」とする、外交的ボイコット(diplomatic boycott)を呼びかけた時だろう。
「外交的ボイコット」を早々と決めた米国でも、そもそもなんなのかという論議が起こっている。米スポーツ専門チャンネルESPNは、これについて「大会に各国の代表者を派遣しないことを意味」と定義。代表者に当たる人物は通常、その国の首脳に匹敵する政治家や王室のメンバーとしている。
米政府としての対応を正式に発表したのは、昨年12月6日のことだ。ホワイトハウスのサキ報道官は、「バイデン政権は北京オリンピックに政府関係者を派遣しない」としながらも、トレーニングを続ける選手への出場については「参加すべき」と述べている。