中華街に占い店を広めた人物の名

では、中華街なのに、どうして占い店が多くなったのだろうか。「中華街の女仙」(「女仙」・「仙女」は女性の仙人の意)と呼ばれた人がいた。

山縣由布(1927~2010年)である(山縣由布、2009年)。

1991年頃に日本のバブル経済も終焉しゅうえんし、繁栄を見せていた横浜中華街も不況で空き店舗が増えてきた頃であった。

日光の江戸村で占い師をしていた山縣は、1995年、横浜中華街で2坪の場所を借り、占い店を始めた。山縣によれば、占い業は一坪の場所さえあれば成立し、必要なのは一つの机とイス3脚、そして占い師。ここで、手相一律1000円で始めた。

2005年に「鳳占やかた」を設立。その後、横浜中華街の中の横浜バザール、チャイナスクエアなどに新店舗を開業した。

さらに占い師を養成する「みかど学院」を市場通りに設立した。

分析を行う占い師の手元
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バブル崩壊で空き店舗が増えたことが要因

ここで、占い店急増の要因を考えてみよう。まず設備投資費用がわずかで、店舗スペースも狭くても大丈夫であること。

次にバブル崩壊後、中華街に空き店舗が増えたが、そこに占い店が入るケースが増加したこと。

つまり店舗が閉店した後、新たな入居を待つ一時的な期間でも、占い店であれば即座に開店することができ、新たな店舗の入居が決まれば、直ちに立ち退くことも難しくはないのである。

激戦区に広がる三つのグループ

横浜中華街は、今や占いの激戦区となった。

そして訪れたら、ついでに占ってもらおうという流れが、特に若い人たちの間で定着してきている。

先に述べたように、中華街発展会作成の「横浜中華街ガイドマップ」2021年版に記載されている16軒の占い店をみると、大きく三つのグループからなることがわかる。

一つは前述の「鳳占やかた」(4軒)である。同業者の「愛梨 占い館」も横浜中華街内に3店舗をかまえ、ウェブサイトでは「日本最大級の占い館」を謳っている。

南門シルクロードにある愛梨本店カモメ館には、12人の占い師(鑑定士)が顔写真付きで紹介されている。「鳳占やかた」および「愛梨占い館」ともに料金設定はほぼ同じである。手相鑑定が1100円(7分間)、タロット・算命学・四柱推命・気学・西洋占星術が各3300円である。

両グループより低料金なのが「縁占館」で、横浜中華街に4店舗あり、手相占い500円(税別)からをアピールしている。