他社との協業で発売前からユーザーの意見を取り入れる
そしてもう1つの画期的な試みは、発売前からユーザーのリアルな声を取り入れようとしたこと。
22年春に発売予定のチールを、まず21年12月にクラウドファンディングのサイト(CCCグループ運営の「GREEN FUNDING」)で先行予約してもらうことに。同時に期間中、CCC系列の「蔦屋家電+」(東京・二子玉川)で、チールの外観を先行展示しようと考えたのです。
CCCは、7000万人分とも言われる膨大な顧客のライフスタイルデータを所有し、データマーケティングに長けた企業。
先のアクタスやCCCなど、他社と発売前から闊達なアイデア交換を行なう理由について、「お客さまのニーズやラフスタイルの多様化、そして『QoL(Quality of Life/生活の質)』の向上に貢献するために、オープンな『協創』の視点が重要だと考えたから」だと、日立GLS・経営戦略本部の米山卓美さん。
発売してからもアップデート
実はこの「共創(協創)」こそが、大きなキーワードの一つ。ベースにあるのは、「アジャイル型」、すなわち走りながら考え、改良を加えていくような商品開発・マーケティングの手法です。
以前紹介した「おやつのサブスク」など、毎月なんらかの商品やサービスを提供するサブスクリプションサービスでは、初期の顧客にβ版を見たり試したりしてもらうことで、顧客の反応をみながら、その後のPRや提供内容に「改良」を加えていくことができます。正式発売の前にも、アップデートが可能です。
これに対して家電は、いったん世に出した商品そのものをアップデートするのは難しかった。ところが近年、ロボット掃除機に代表されるように、AIやIoTなどを活かした「デジタル家電」が普及。発売後もスマホアプリのように、ソフトの部分を少しずつアップデートできるようになったのです。