構成は主張全体の把握のためにつくる

執筆中に言葉を探すには、文章の構成について考える必要がないほうが楽です。

ですので、原稿のアウトライン(構成)は印刷して目の前に置いておきましょう。文中の別の場所で扱うのでいまは書く必要がない内容を、きちんと把握しておくのも大切です。

アウトラインの作成や変更も、執筆とは異なるスキルが必要です。これは、思考ではなく、主張全体の把握です。

ここで重要なのは、アウトラインの作成は、執筆の準備でもなければ、計画ですらないと理解することです。アウトラインの作成も、独立したタスクです。

ツェッテルカステンでアウトラインをつくる場合、アイデアをいろいろと組み合わせて、興味を惹かれるつながりや比較を探しましょう。

塊をつくり、他の塊と組み合わせ、あるプロジェクトにおけるメモの順番を決めます。メモをパズルのように組み合わせて、最適な順番を見つける必要があります。これは他と比べて連想力を駆使し、楽しく、クリエイティブな作業で、ここにもまったく別の種類のスキルが必要になります。

できあがった構成のチェックは常に必要ですが、じつはこれも、ツェッテルカステンでボトムアップから作業していれば、必然的に何度も変更になります。メモのつながりを見ながら、構成を変える必要が生じるたびに、一歩引いて全体像を眺め、必要な変更を加える必要があります。

まとめると、書くことには、実に幅広い種類のスキルが必要です。書く技術をマスターするには、その時々に応じて必要なスキルと集中を利用できるようにならなければなりません。

クリエイティブな人とは集中力と柔軟性のある人

かつては、より「持続的な注意」は、芸術のようなクリエイティブな仕事にのみ必要であると考えられていました。しかし、現代では、どんな仕事でも「集中」と「持続的な注意」と、2種類の注意が必要であるとわかっています。

心理学者のオシン・バルタニアンは、ノーベル賞受賞者やその他の著名な科学者の毎日のワークフローを比較分析し、彼らの際立った特徴は、飽くなき集中力ではなく柔軟性を保った集中力であると結論づけました。

「有名な科学者の問題解決をしようとする行動は、特定のものへの卓越した集中力と、遊び心あふれるアイデア探求のあいだを行き来することができる。このことは、すぐれた問題解決が、そのタスクへの柔軟な戦略応用の働きである可能性を示す」(Vartanian, 2009)

こうした研究は、クリエイティブな人々を研究する心理学者に答えを与えました。「とりとめがなく、集中力散漫で、子供のような心をもった人々が最もクリエイティブであるように思えるいっぽうで、分析と応用も重要であるようにも思える。この謎の答えは、クリエイティブな人々は両方を兼ね備えている必要がある、というものだ(中略)創造力の鍵は、大きく開かれた遊び心と、狭い分析的な枠組みを切り替えられることなのである」(Dean, 2013)

写真=iStock.com/Deklofenak
※写真はイメージです