日本のビジネスパーソンに圧倒的に足りないもの
経営学博士のピーター・ドラッカー氏は「スケジュール帳を埋めるのではなく、空欄をいかにつくるか。1日のうち自分と向き合い考えるための2時間枠を確保すること」という言葉を残しています。
また、元ソニー会長の出井伸之さんは、著書で「日本のビジネスパーソンに圧倒的に足りないもの。それは、一人になってじっくり考える時間である。会社と家庭以外の第三の時間を強制的に作るべきである」(出井伸之『変わり続ける』ダイヤモンド社、2015年)と話し、コピーライターで「ほぼ日」社長の糸井重里さんは、かつて「ひとり時間の足し算が自分をつくる。ほぼ日手帳はアポ管理ではなく、自分と向き合うメモ帳である。一人になれる時間が僕を決めている時間で、生きている時間です」とインタビューで話されています。
いかに、家族からも離れて一人になってまでノイズを断ち切る習慣を大切にしているかがうかがい知れます。
ニュートンの偉業につながった“創造的休暇”
コロナ禍になってから、メディアからは情報ノイズがあふれ出る一方、密状態からは離れて物理的・空間的にノイズとは距離を置けた人がいるかもしれませんね。
実は、1600年代にも世界を動かした人物が同じ状況になっていました。万有引力の法則などを発見したアイザック・ニュートン氏です。リンゴが木から落ちる様子を見て着想したという有名なエピソードがある人です。
ニュートンが研究者人生を送っていたのは、ペストが大流行した時代でした(今でいうコロナ禍のようなパンデミック)。当時のヨーロッパの人口の3分の1が死亡したとも言われる大変厳しい状況だったようです。この影響でニュートンが研究生活を送っていたケンブリッジ大学も閉鎖されることになり、1665年から1666年にかけて2度、カレッジでの雑事から解放され、故郷のウールスソープへと戻っていきました。
そこで行動の自粛生活に入ったのです。
ところが、“災い転じて福となす”とはこのことで、結果的にあらゆるノイズから解放されたことで、自由に思考する時間を手にし、この時の時間が後の数々の偉業につながっていきました。後にニュートンは、この期間のことを“創造的休暇”と名付けたそうです。
仕事で成果をあげるためには、普段より、情報を含めあらゆるノイズを断ち切る時間や場所をつくることが重要な鍵を握っているということです。