人事部に「ご苦労様でした」と言われたら、ノーテンダー社員

50歳を過ぎると、さらにリスクは高まる。金融機関では50歳になると支店長や部長クラスになれなければノーテンダーとなり、出向させられる。しかも一度出向すると2度と本社に戻れない片道切符だとされる。

実はノーテンダーと明確に位置づけられている社員もいる。企業が希望退職者募集を実施する際に、一般的には「会社に残ってほしい人」を慰留し、「辞めてほしい人」に退職勧奨を行う面談を実施する。

筆者が入手したある企業の「退職勧奨マニュアル」には「本人に対し、会社側の評価を明確に伝える」と書かれ、以下の3類型が表示されている。

① 残留者(A):厳しさを認識させ、今後、社内での活躍を期待する
② 本人選択(B):厳しさを認識させ、本人の選択に委ねる
③ 退職候補者(C):社外での活躍を促す

これはABCランクと呼ばれ、対象者全員と面談する。残ってほしい人(残留者)がA、退職してほしい人がCに当たるが、留まるか、退職するかを本人に選択させるBランクの社員こそ、ノーテンダーといえる。

そしてマニュアルには、Cランクの社員は「社内ではあなたの経験と能力を十分に活用できる職務がなくなっているのが現状です」と伝え、「早期退職プラン」を使って退職を促す説明が書かれている。

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また、Aランクの社員に「あなたの役割の重要性を今以上に認識し、この機に際し改めて、今後どのような職責を果たしていくかを考えていただき、経営改善達成のために最大の努力をしていただきたいと考えています。今まで培ったキャリアを存分に発揮されることを期待しています」と説明し、本人が「がんばります」と答えたら「これからもしっかり頼みます」と結んでいる。

一方、Bランクの社員の説明では「自らの今後について考えていただき、社内で培ったキャリアを社外で活用し、活躍することで活路を見いだしたいという方には、会社としてなしうる最大の総合的な支援を行うことが、会社の責務であると認識して、今回の『早期退職プラン』を発表しました」と書かれている。

つまり、Aランクの社員には退職プランの話は出さずに、会社が期待していることを伝える。Bランクは残ってもいいけど、社外での活躍を希望するのではあれば退職プランもありますよ、と伝える。おもしろいのは本人が「会社でがんばります」と言ったら「ご苦労様でした」と、たった一言で終わっている。会社がそれほど期待していないことが透けて見えるようだ。