失敗に終わったアフリカの輸入禁止の試み

このような状況を受けて、アフリカの国々の中には、自国の繊維産業を保護するためにも、先進国からの古着輸入を禁止しようとする国も出てきました。東アフリカ共同体は2016年、地域内の衣料品産業や繊維産業を保護・成長させるために、国外から輸入される古着の関税を段階的に引き上げ、2019年までに古着の輸入を禁止することで合意していました。

これに対して「自由貿易協定に反する」と猛反発したのが、古着輸出大国のアメリカです。

アメリカにとっては、自国で行き場を失った古着の「最終処分場」を失うわけにはいきません。アメリカの古着業界団体は「アメリカ人が捨てた衣服は海外で販売されなければ、アメリカ国内の埋め立て地に行きつき、環境破壊を引き起こすことになる」と警鐘を鳴らしました。

また、一つの産業と化している古着の輸出ができなくなれば、アメリカ国内で多くの失業者が出る可能性があります。同団体は、衣類の仕分けや梱包など、4万人のアメリカ人の雇用が危険にさらされると訴えました。

先進国にとって輸出先の存在はありがたい

その結果、アメリカは東アフリカ共同体に対して、関税を免除することでアメリカへの輸出を支援し、アフリカの経済成長に繋げる「アフリカ成長機会法」を停止することを示唆。つまりは超大国アメリカに貿易制裁のプレッシャーをかけられる形で、アフリカの国々による古着の輸入禁止の試みは失敗に終わりました。

アフリカの人たちの「先進国依存から脱却したい」という思いは頓挫し、今なおアフリカは古着の「最終処分場」にさせられたままなのです。

先進国にとって、アフリカが古着の輸出先になってくれるのは、とてもありがたいことです。本来は自国で処理するべきコストを削減できるうえに、古着の輸出自体が一つの産業となり、貿易収支や雇用を増やすことができるのですから。

ましてや「アフリカの貧しい人たちを助けよう」といったチャリティの名目で古着を回収すれば、その企業や団体のイメージアップにも繫がるかもしれません。

しかし、アフリカをはじめとした途上国は、先進国から送られてくる大量の古着によって地元の産業が破壊される問題に悩まされてきました。