「近くて手に入りそうな存在」だからこそ破格の金額を投じる女性たちもいる
ホストクラブやメンチカ(※)といった業界は、こうしたSNSによるブランディングと、ファン(客)とのつながりによって支えられている側面が大きい。メジャーなアイドルや有名人は一人のファンによって売り上げや人気が左右されることはあまりないが、彼らは客との距離が近く、直接やり取りしている場合が多い。それだけ推しが「近くて手に入りそうな存在」であり、サービス以上に破格の金額を投じる女性たちがいるのもまた事実だ。
※メンチカ
メンズ地下アイドルの略称。ライブに加え、チェキや物販で稼ぐ。数百万円を稼ぎだすメンチカも存在する。そのため物販やチェキでの特典が過激になることもある。ハグに始まりキスなども……。某メンズ地下アイドルは、「前戯」を物販したことで炎上したらしい。
こうした距離感のリスクとしては、顧客への対応やLINEのやり取りがネット上に晒されたり、ネットストーカー傾向のある厄介な客の管理まで仕事のひとつになる場合がある。
そうした「SNSでの営業」をコンカフェキャスト以上に強いられている職業がある。女性専用風俗だ。男性向けに比べればまだまだ認知度が低いことに加え、女性が予約するには勇気がいるため、なかなか広がらなかった。筆者がある大手グループに予約のLINEを送ったとき、「勇気を出してお問い合わせいただきありがとうございます」とメッセージが返ってきたほどだ。
そんな女性用風俗界隈では、「女風に興味があるけどまだ予約までは……」といった女性がSNSのアカウントを作成することが多い。キャストはそんなアカウントに向けて営業DMを送るなど日夜を問わず活動する必要性がある業界となっている。
講習料と登録料として7万円を払い、セラピストになった19歳
2018年は石田衣良の小説『娼年』が松坂桃李主演で実写化された年でもあり、女性用風俗の認知度が拡大したことで女風元年と呼ばれている。確かに過去に出張ホストなどはあったが、料金が高額、本番行為を伴うなど違法性が高かった。しかし、現在は非本番で料金設定も60分1万2000円程度で若いイケメンのセラピストが在籍する店舗が増えた。令和ならではの女性用風俗という女の新たな遊びだが、ただプレイするだけではない。そこで働き手は心身ともに疲弊しているケースが多い。
「正直、こんなに風俗の仕事がキツいとは思っていなかった」
そうこぼすのは、都内の人気店で働いて半年になる19歳のハルキだ。コロナ禍で就職予定だった美容室が倒産し、生活資金を稼ぐためになんの知識もないまま業界の門を叩いた。
店主による雑な説明と簡単な実践、そして講習料と登録料として僅かな貯金から7万円を支払いセラピストに登録したという。もともと男社会や会話でのコミュニケーションが苦手だったというハルキは、女性用風俗なら「作業」をすればいいだけだと思っていたが、実際は違った。