相手の「助けてあげたい」気持ちを引き出す

私は、言葉の定義を聞くことで、間抜けを演じます。相手から「ロジャー、君がこんなことを提案するなんて、もはや形而上の問題だよ」と言われたら、「形而上……形而上って……えーっと」と答える。「その言葉、聞いたことはあるけど、意味がよくわからないんだよね。説明してもらえないかな」、あるいは、「その数字をもう一度説明してもらえないですか。もう何回もやっていると思いますが、なぜか理解できないんです。いいですか」。そうすることで、“今回はなんて不器用なんだろう”と思ってもらえます。

ロジャー・ドーソン、島藤真澄訳『本物の交渉術 あなたのビジネスを動かす「パワー・ネゴシエーション」』(KADOKAWA)

このようにして私は、妥協案を実現することを困難にしていた相手の競争心を休ませます。相手は私と戦うのをやめて、私を助けようとしてくれます。

ただし、自分の専門分野で間抜けな行動をしていないか注意してください。もしあなたが心臓外科医なら、「三重のバイパスが必要なのか、二重でいいのかわかりません」とは言わないでください。建築家であれば、「この建物が建つかどうかはわかりません」と言ってはいけませんよね。

相互利益の交渉は、それぞれの側が相手の立場に共感しようとする意思に基づいて行われます。双方が競争を続けていては、そうはいきません。交渉人は、“間抜けな行動”が競争心を和らげ、相互利益への道を開くことを知っているのです。

《覚えておくべきキーポイント》
①間抜けな行動は、相手の競争心を和らげる。
②無表情でいることで、相手があなたを助けてくれる。
③言葉の定義を聞いてみる。
④何かをもう一度説明してもらう。
⑤自分の専門分野では間抜けにならないこと。
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