書き直したメモと文献管理のメモを残す
永久に保存するメモは2種類だけ。
文献管理システムに格納する文献メモと、ツェッテルカステンに格納するメインのメモです。前者はごく簡単で構いません。メモが指し示している文献の本文こそが重要なのが明らかだからです。
後者はもっと注意深く、詳しく書く必要があります。単独で読んでもわかるようになっていなければならないからです。
ルーマンは、本で読んだ文章に下線を引いたり、余白にコメントを書き込んだりすることはありませんでした。ただ、注意を引いたアイデアについて、別の紙に短いメモをとっただけです。「文献の内容を詳しく書いたメモをとる。その裏面に、この内容はこの本の○ページ、これはこの本の△ページ、と書いて、読んだ内容を集める文献管理用のツェッテルカステンに入れるんだ」(Hagen,1997)
そして、文献管理用のメモをしまう前に、ルーマンはメモした内容を読み返し、自分の思考の流れとの関連性について検討し、それを元にメインのメモを執筆しました。それを永久保存版のメモとして、メインのツェッテルカステンに格納しました。
この箱に入ったものは、捨てられることはありませんでした。目立たないところに落ち着き、二度と注目されないメモもありましたが、さまざまな推論の結節点となり、あちこちの文脈で何度も登場するメモもありました。
メモは「自分の言葉で書く」からこそ価値が出る
ツェッテルカステンがどのように発展するかを予知するのは不可能です。だから、メモの運命については心配する必要はありません。
走り書きのメモとは対照的に、ツェッテルカステン用の永久保存版のメモではすべて、最終的な論文や著書の一部になるか、そのヒントになるぐらい、自分の言葉で説明する必要があります。
ただし、後々役に立つかどうかは、その場では判断できません。
メモが関連性を帯びるかどうかは、今後の思考とアイデアの展開によるからです。メモはもはや思考やアイデアを思い出すきっかけではありません。文章のかたちで表された、思考やアイデアそのものです。これは、他の方法との決定的な違いです。
さまざまな形式でメモをとり、あちこちに保存することで、不必要に使い方がわかりにくくなったり、余計な判断を伴ったりすることがなくなるので、思考や著述のプロセスを促進する鍵にもなります。
すべてのメモを同じ形式で同じ場所に保存してこそ、あとで組み合わせて並べ替え、新しいものをつくりだせるようになり、また、どこにしまう、どんなラベルを付けるといった問いに思考をむだづかいしなくなります。