ガリレオやニュートンが大発見を生み出したワケ
科学の力には二つの側面がある。与えられた課題に対して、限られた時間内により良い解答を見つける。これは現代の社会が必要とし、常に競争の渦中にある企業が求めている能力だ。もう一つは、思わぬ発想で常識をひっくり返し、新しい理論や世界観を作る能力だ。これには、時間は制限要因にならない。一生のうちに、そういった機会に巡り合い、その能力を一度でも示すことができればいい。
コペルニクスも、ガリレオも、ニュートンも、そして益川敏英さんもそういう幸運に恵まれた科学者だ。でもその大発見を成し遂げるまでに、気の遠くなるような思考実験があったはずである。それは決して与えられた問いから生まれたわけではないし、競争によって得られたわけでもない。まだ先人の気づいていない真実を探し求めたいという野心を持ち続けたことが、その大発見を生み出したのである。
真の科学の力は勝つ能力ではない
すイガールたちの勝利は、彼女たちが前者の能力に秀でていたことを示している。何よりも目的をよく理解し、そこにたどり着く道を必死に探し、チームで勝利を勝ち取ろうとする団結力は素晴らしい。昨今、チームワークに優れた、即戦力として働ける人材を育てることが大学に求められているが、すイガールたちの勝利は、その能力が大学とは違う世界で鍛えられることを示唆している。
しかし、京大生が示したもう一つの能力も、私たちの社会にブレークスルーをもたらすために必要である。それは、正解を早く出すことではなく、これまでの常識に従わず、新たな考えに挑戦しようとする態度である。イノベーションはその積み重ねによって拓かれる。いまの科学技術を100年前の誰が予想しただろうか。真の科学の力とは勝つ能力ではない。これら二つの違う能力を組み合わせることが夢ある未来を作るのだと思う。