※本稿は、高水裕一『物理学者、SF映画にハマる』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
タイムワープで未来からの使者が裸で現れる演出
タイムトラベルにおける転送物の再構築とタイムトラベルの新たな方法論について、「ターミネーター」シリーズを通して少し考えてみましょう。
もともとは映画で始まった本作品ですが、その後ドラマシリーズが『ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ』としてシーズン2まで製作されました。内容はご存じの方も多いかと思いますが、未来において、発展した人工知能により人類に反旗を翻したロボット軍と、生き残った人類の抵抗軍との戦争がテーマです。
しかし、主に描かれるのは、その未来の戦争のほうよりも、未来から現在に刺客として送り込まれるロボット(ターミネーター)と、主人公を守るターミネーターとの攻防です。主人公のサラ・コナーの息子は、未来で抵抗軍のリーダーになるので、ロボット軍はその前に未来からタイムトラベルをして生まれる前に阻止しようと企てます。
個人的には、ドラマ版のストーリーが面白いと思っています。それは、サラの息子、ジョン・コナーが青年期を迎えて、抵抗軍のリーダーになるまでの成長過程を描いているからです。
また、ジョンを守る未来から送り込まれたターミネーターも、シュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)のようなコワモテのおじさんではなく、超美人なキャメロンという女性モデルのターミネーターなので、一見、殺人マシンだとは分かりません。その意外性が物語により広がりを与えて、面白みをグッと上げているように思います。他にも映画ではシリアスの連続ですが、ドラマ版ではそれだけでなく、コメディあり、のどかな学園風景もありで物語の厚みを与えています。
この作品では、基本的にタイムワープすると、転送先で光の玉が突然現れて、そのなかから未来からの使者が裸で現れるという定番の演出があります。
ここで、タイムワープにおける転送を考察してみましょう。