グローバルヘルス分野の「iPhone」を作りたい
民間の国際貢献の必要性を説く中川さんだが、世界における日本企業のプレゼンスの低さを嘆く。クルマはトヨタが奮闘するが、ワクチン冷蔵庫は海外メーカーしかいない。本来ならばものづくり立国である日本の力を発揮する部分である。
「どうしてここに日本企業が入らないのか、家電メーカーに聞いてみたことがあります。技術的にはもちろん製造可能なのですが、市場が小さいからやらないと言われました。ビジネス的な理由が大きいわけです」
市場が拡大すれば日本企業も食指が動くが、その時には競合もひしめき合っているだろう。ニワトリが先か、タマゴが先かの話だが、人類のための投資としてこの分野に取り組んでもらいたいと中川さんは願う。
「本当はワクチンも日本企業が作り、オールジャパンで取り組みたい。日本の産業界がイニシアチブをとっていかなければならないと考えています。今私たちができるのは、ランドクルーザーを生かした新たな支援活動で、ワクチン輸送におけるラストワンマイルとコールドチェーンの2つの問題を解決していくことです。存分に日本の力を見せつけたいです」
中川さんが目指しているのは、グローバルヘルス分野での「iPhone」を作ることだ。
「iPhoneに代表されるスマートフォンは、いまや全世界の人たちが使っています。メーカーにとっても利益につながるし、人道にも貢献します。グローバルヘルスにおいて、これがないと生活できないというものを作りたい」
グローバルヘルスを変える第一歩となったワクチン保冷輸送車は、休むことなく今日もアフリカの荒野を駆け巡っている。中川さんの夢も乗せて——。