「そろそろですね」を受け止めよう

自治体によっては、緊急コールボタンを配布しているところもあります。

ですが、それも申請のあった高齢者だけです。その緊急コールボタンさえ、敷居が高くて押せない、だから子どもに連絡してしまう……という年寄りもいます。緊急コールボタンがそのまま119番に連動しているところさえあって、笑っちゃいました。

庶民感情としては119番するのってハードルが高いもの。そんな気軽にダイアルするわけじゃありません。それよりハードルが低いからと、自治体の緊急コールボタンがあるのに、それが119番につながっているようでは何のためにあるかわかりません。

上野千鶴子『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)

視察に訪れた北欧では、訪問介護につながる在宅の高齢者には、事業所が緊急コールボタンをわたしていました。それもトイレや風呂場で倒れたら手が届かないことを配慮して、首から下げるペンダント式でした。

あるひとり暮らしの男性高齢者をご自宅にお訪ねしたときには、ペンダントはデスクに置いてあり、たまたま訪問していた娘さんが、「首にかけておいてって言っても、言うこときかないのよ」と嘆いておられましたが。

心配いりません。加齢に伴う死は、穏やかなゆっくり死。「そろそろですね」という医療や介護職の予測は、ほぼ当たります。119番したばっかりに火事場の大騒ぎのような死に目に逢わなければならないことは、避けられます。そのためには、大量死時代の死の臨床像が変わったことを、もっと多くの人が知ること、そして病院死が決してのぞましい死ではないことを、学ぶことです。

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