「ラーメン」の呼称を日本中に広めたある製品

さらに、「ラーメン」の呼称が全国的に広まっていくのは、1958年、日清食品(当時はサンシー殖産)が、即席麵の「チキンラーメン」を発売し、それが爆発的に売れてからであった。

同じ頃に普及し始めたテレビのコマーシャルでも、「インスタントラーメン」が頻繁に宣伝されたことによって、ラーメンの呼称が日本全国に広まった。くわえて、それ以前のラーメンは、中華料理屋のメニューの一つや、餃子屋の添え物にすぎなかったが、1960年代頃から、ラーメンの専門店が、全国にできていったという。

韓国でラーメンと言えばインスタントラーメン

ちなみに、韓国では、ラーメンを「ラミョン(라면)」と呼ぶ。なぜならば、日韓関係の正常化が模索された1960年代、インスタントラーメンが、日本から韓国へと伝わったからである。

1963年、サミャン(三養)食品は、日本の明星食品から無償技術供与を受けて、インスタントラーメンの生産を開始した。それは発売当初、明星食品の日本人向けの味のままであったが、3年間の試行錯誤を経て、麵やスープが、韓国人の嗜好に合うものに改良された。サミャン食品は、韓国で市場占有率首位の代表的なラーメン製造業者になった。

ただしその後、1965年にロッテから独立して86年に辛ラーメンを発売したノンシン(78年にロッテ工業から農心に社名変更)に首位を明け渡した。

このように韓国スタイルのラーメンは、インスタントラーメンとして始まったので、韓国では現在でも「ラミョン」といえば、インスタントラーメンのことを指す。

さらに、韓国に限らず、日本以外の国々では、「ラーメン」といえばインスタントラーメンを指すことが多い。中国ですら、現在では「拉麵」といえば、即席麵がイメージされることが多い。

日本の国民食から世界食へ

世界インスタントラーメン協会によれば、2020年に世界中で1年間に消費されたインスタントラーメンは、1165億6000万食にのぼる。

岩間一弘『中国料理の世界史』(慶応義塾大学出版会)

国別に見ると、中国・香港が463億5000万食で首位、2位のインドネシアが126億4000万食、3位がベトナムで70億3000万食、4位がインドで67億3000万食、5位は日本で59億7000万食、6位がアメリカで50億5000万食、7位がフィリピンで44億7000万食、8位が韓国で41億3000万食、9位がタイで37億1000万食、10位がブラジルで27億2000万食である。

日本のインスタントラーメン消費量は、2018年にインド、20年にベトナムに抜かれて世界第5位に転落している。

このように、中国・台湾をルーツとして、日本から発信されたインスタントラーメンは、国民食から世界食への発展に成功した代表的な食品である。

※出典を示した注については再編集にあたり省略しました。詳細は書籍をご覧ください。

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