乗り換え検索に「思い出」は表示されない
ショッピングサイトには購入履歴を表示する機能がある。過去になにを買ったかわかる。しかし乗り換え検索はいまのところ、現在と未来しか調べられない。さかのぼっても1カ月くらいだ。検索履歴をメモする機能もあるけれど、そのルート以外の交通状況はわからない。
しかし、月刊時刻表はいつまでも手元に置ける。旅したときの時刻表があれば、自身が乗った列車と他の列車の関係を確認できる。
筆者は旅の記録を文章で残し、「のらり」というコラムサイトで連載している。「乗り鉄」が終わったら「書き鉄」だ。旅から帰ってすぐに書ければいいけれど、現実にはすぐに着手できない。旅が時事的な取材であれば、その原稿を優先する。旅の間に書けなかった原稿もある。仕事を優先すれば自分の旅の記録は後回しだ。
1日の旅を詳しく書けば3~4週にわたる。不本意ながら、現在は2021年10月だというのに、2018年の夏の旅を書いている。写真とメモがあるから記憶は再生できる。しかし「あのときすれ違った列車はなんだっけ」「予定とは違う列車に乗ったな」となると、実際の行程を再確認したくなる。しかし乗り換え検索サイトは3年前のルートを教えてくれない。
こんな時は月刊時刻表が頼りになる。時刻表を買う理由は、何年か後で「書くため」だ。旅を書き終わって、やっとその月の時刻表が用済みとなり、処分できる。ひとつの旅を3回楽しめる。計画、実行、思い出の記録だ。
時刻表の「行間」にあるミステリー
旅の計画をしなくても時刻表は楽しい。これはもう趣味的すぎて恥ずかしいけれど、時刻表は列車の運行以外に隠されたメッセージがある。もっともわかりやすい例は「土休日運休」だ。大都市の鉄道のほとんどは、平日ダイヤと休日ダイヤに分かれている。通勤通学需要が大きく変化するからだ。
JTB時刻表の東海道本線東京―熱海間を見ると「土曜・休日運休」と「土曜・休日運転」の列車が並んでいる。ほぼ同じ運転時刻で、いくつかの駅だけ差異がある。いっそ平日と土曜休日のページを分けてほしいと思う。
しかしこれは全体のページ数を減らす工夫だ。平日と土曜休日のページを分ければ、どちらも共通で運転する列車を2回掲載することになる。ページ数が増える。時刻表は第三種郵便物取り扱い上限の1kgに納めるため、紙質やページ数を工夫して軽量化している。