JTB時刻表の主な読者層は30代~50代で、男性75%、女性25%。「約8割が旅行の計画に使用し、約4割は持参しています」「鉄道旅行に関心のある読者が多く、日常的な情報収集を目的としても購読されています」と説明されている。JR時刻表の読者層も似ているけれども「全国の駅の旅行センターやみどりの窓口でも使用」と説明されているので、運輸業界のビジネス需要がある。

いずれにしても、時刻表を便利に使ってきた読者の大半は乗り換え検索サイトに「乗り換え」てしまった。現在の月刊時刻表は旅行趣味誌だ。巻頭カラーや付録など、鉄道ファン向けのお楽しみ企画を毎号展開している。

乗り換え検索と月刊時刻表の旅の違い

筆者は今年の春に日本全国の旅客鉄道路線(廃線になった路線を含めて29332.9km)を乗り終えた。乗り鉄を始めて半世紀。20年ほど前まで、旅の計画といえば時刻表を駆使していたけれども、現在は乗り換え検索サイトを使う。もちろん便利だからだ。

しかし、全国ダイヤ改正となる4月号と、旅に出る月の時刻表は必ず買う。ダイヤ改正号は変化を探す楽しみがある。旅に出る月の時刻表を買う理由は2つ。「楽しく乗るため」と「書くため」だ。

「楽しく乗るため」の使い方として、高知県の甲浦かんのうらの旅を例に挙げる。いきなり知る人ぞ知る地名を出したけれども、この地を走る阿佐海岸鉄道で、今年から「DMV(デュアルモードビークル)という、道路と線路の両方のモードを備えた車両が実用化される。その取材だ。

阿佐海岸鉄道のDMV(デュアルモードビークル)。タイヤのほかに鉄道用の車輪を装備する(2019年撮影)
写真提供=杉山淳一
阿佐海岸鉄道のDMV(デュアルモードビークル)。タイヤのほかに鉄道用の車輪を装備する(2019年撮影)

乗り換え検索サイトを使うと、東京近郊にある筆者の最寄り駅から羽田空港へ行き徳島空港へ飛ぶ経路が出る。徳島空港から連絡バスで徳島駅、JR牟岐線と阿佐海岸鉄道を乗り継いで甲浦に至る。

鉄道で行きたいからと「空路」のチェックを外すと、新幹線で岡山へ行き、特急「うずしお」で徳島駅へ、そしてJR牟岐線と阿佐海岸鉄道を経由する。この2つのルートは「最短」「最安」つまりもっとも便利なルートだ。会社の出張ならこの二者択一になるはずだ。