自己肯定感が低いと外国人が肯定してくれない
また、海外で成果をあげるには、自己肯定感が欠かせないとよく指摘されるが、これについても、前出の内閣府の調査で結果が示されている。
「自分自身に満足している」という問いに「そう思う」と答えた人は、日本人は10.4%にすぎないのに対し、韓国人は36.3%。さらにフランス人は42.3%で、アメリカ人は57.9%で、調査対象の7カ国中、自分への満足度すなわち自己肯定感は、日本人が圧倒的に低かったのだ。
「出演予定の歌手が急病のときなど、歌劇場は代役を探します。若手はそういうチャンスをものにすることが大事。全曲通して歌えるレパートリーを増やして代役のオファーを待つとか、勉強したことがない作品のオファーを受けても、急いで楽譜を買って数日で仕上げて舞台に立つとか、積極性が必要です。でも、そういう前向きな姿勢がある日本人は少ない」(前出の女性歌手)
海外で認められるとはすなわち、是が非でも食らいついて、外国人に自分を肯定させるということだろう。そういう突破力は、自己肯定感があってこそのものである。
日本語はしゃべるときに表情筋を使わない
最後に、日本人にとって最も根の深い問題に触れたい。それは留学しても修正するのが難しい、日本語特有の発語に関するものである。
イタリアに長く住んでいた歌手が言う。
「日本人は喋っているときに表情が見えにくい。日本語は顔の表情筋をほとんど使わずに喋れてしまうからで、韓国語や中国語とくらべても、圧倒的に表情筋を必要としません。口先をわずかに動かすだけで、ほとんどの意思疎通が可能なのが日本語で、このコロナ禍にかぎれば、飛沫が飛びにくいというメリットがありますが、外国語を発音し、外国語で歌ううえでは、大きなハンデを背負っています」
イタリア語とくらべてみたい。母音を強調するのでカタカナに近く、日本人には発音しやすい言語だとよくいわれるが、実は、日本語とは発語する場所がまったく違う。
日本語は口先だけを動かせば、舌も口内の筋肉もほとんど使わずに発語できる。一方、イタリア語は口の奥の舌根付近で発語し、口内のあらゆる筋肉を動かして音を響かせる。
こうした特徴は、英語にもフランス語にもドイツ語にも共通している。ところが、その違いに気づかないまま、口内の筋肉は遊ばせたまま口先だけで発語し、表面的にイタリア語やフランス語、英語を真似ている人が多いのだ。