国立科学博物館が財政難からクラウドファンディングを行い、目標だった1億円を初日で達成したことが話題になっている。国際カジノ研究所所長の木曽崇さんは「美談で終わらせてはいけない。財政難に陥った要因を改善しない限り、日本の博物館に未来はない」という――。
「バックヤードツアー」は欧米圏では標準的な施策
国立科学博物館が資金不足の補塡のために、バックヤードツアーなどの特典を付加したクラウドファンディング(以下「クラファン」と表記)を実施し、開始から9時間で目標額の1億円を達成したとのニュースが報じられました(8月18日時点の支援金は6億7394万7500円)。
このニュースは現在「支援金と共にたくさんの応援コメントが寄せられ……」などとして報じられていますが、これを「美談」として終わらせてはなりません。むしろ、その背景にあるものは全く逆の文化施設等をめぐるわが国の状況です。
博物館や美術館などの文化施設が高額の拠出をした者に対して、他とは違う特別なメニューを提供するというサービスは、欧米圏においてはいたって標準的な施策です。
諸外国の博物館との大きな違い
例えば米国ニューヨークの自然史博物館などでは、一人約2万円で博物館内に宿泊できるサービスなども提供しています。この博物館は映画『ナイトミュージアム』の舞台で、そこに宿泊し、夜の博物館を体験できるこのプランはとても人気を博しています。
今回の国立科学博物館が実施したようなクラファン形式での資金調達を、世界の主要美術館で初めて成功させたのは2010年のルーブル美術館であるともいわれています。ルーブル美術館では寄付者に対して、通常営業をしていない閉館日に特別に作品を見る機会を提供しています。
さらには、寄付者は一般公開前の作品を鑑賞できるレセプションに招待されるなど、さまざまな特別な待遇が提供されています。結果として、ルーブル美術館の自己収入比率は全運営費の43%にまで及んでおり、例えば日本の国立科学博物館の自己収入比率26%と比べると非常に高い水準となっています。(共に2018年文科省「公立社会教育施設の所管の在り方等に関するワーキンググループ資料」より)