リストラが本格化しつつあるといっても、踏みとどまっている企業も多い。自動車・電機部品などの製造業約1700の企業労組を傘下に抱える労働組合の担当者は「半導体製造装置や工作機械は受注量が前年度比マイナス85%、自動車部品産業もマイナス70%という厳しい状況が続いている。今は政府の雇用調整助成金の給付を受けながら一時休業でなんとかしのいでいる状況だ。それでもがまんできないところは希望退職者募集や賃金カットに踏み切っている。受注量がこのまま推移すれば、人員削減に踏み込む企業が増えるのではないか」と指摘する。
すでに構成企業の3分の1以上で一時休業を実施するなど“体力消耗戦”に突入しており、いつ人員削減に踏み切ってもおかしくないのが実態だ。
こうした情勢下で雇用調整の是非を聞いた。会社の業績が悪化した場合の正社員の雇用調整について「やるべきである」が11.2%、「積極的には賛成しないが、しかたがないと思う」が34.7%。消極的ながらも雇用調整に理解を示す人は45.9%も存在した。一方、「絶対に避けるべきである」が12.7%、「できる限り避けるべきである」が41.3%。雇用調整否定派が54%を占める(図3)。
かつてバブル崩壊後の不況期には社員のリストラは最大の悲劇としてマスコミを中心に世間から糾弾されたものだが、比較的寛容な人が多いのは意外な感じがしないでもない。ただし、世代間では温度差がある。20代はリストラ容認派が56.4%と過半数を超えるのに対し、50代は逆にリストラ否定派が約65%を占めるなど、年齢が上がるほどリストラ否定派が増える。
これはリストラの対象者が40代以降に多いこともあり、自分がリストラされるという差し迫った危機感が若い世代に希薄であることに起因するのか。あるいは20~30代にとっては10代の頃から父親世代のリストラは見慣れた光景であり、回避できるものではないという諦念を抱いているのか。こうした世代間の違いは経営責任の取り方に対する認識の違いにも表れている。
かつて「社員の首を切る経営者は腹を切れ」という名文句を吐いた経営者がいた。これについて(1)「その通り。経営者は潔く辞任すべきである」、(2)「そう思わない。経営再建に尽くしてほしい」、(3)「辞任まではしなくとも、責任は明確にすべき」――の3つから選んでもらった。結果は(1)37%、(2)24.4%、(3)37.8%であり、辞任ないしは責任を明確にすべきという経営者の責任を厳しく問う声が圧倒的多数を占めた(図4)。