退職割増金が給与の1年分しかない企業も珍しくない

実際に大手石油会社は希望退職に当たり、手厚い退職割増金に加えて人事部門が総力を挙げて再就職先の確保に奔走するなど退職後も徹底してフォローした。そのことが残った社員にも安心感を与え、経営再建にプラスに作用したケースもある。かつての退職割増金は通常の退職金プラス給与の24~36カ月分が相場であり、この石油系企業のように業種によっては5000万円以上の高額割増金を支払うところもあった。しかし、今では給与の1年分の割増金しか出ないところも珍しくなく、24カ月分もらえればいいほうだという話もある。

もう一つのリスクは優秀社員の流出だ。調査結果でも「優秀と目される人が転職した」が30.1%に上る(図5)。優秀社員がいなくなれば、とりわけ非製造系の企業の生産性が低下する。実際にリストラを実施したある金融機関は転職会社による優秀社員の“草刈り場”と化し、その後、金融再編の渦にのみ込まれている。

リストラが拡大する中で、自分自身がリストラの標的にされると思っている人はどのくらいいるのだろうか。

図6
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図6

リストラの不安が「かなりある」「多少ある」と回答した人は46.3%に上った。世代別に見ると20代は37%であるが、40代は55.9%、50代は53.3%と過半数がリストラされるかもしれないという不安を抱えている(図6)。

一般的に人事考課の業績がリストラの第一の基準とされているが、たとえ業績が普通でも「年齢が高い」「給与が高い」「管理職である」「不採算部署にいる」など、別の理由で標的にされるケースも多い。不安の増大は「なぜあの人がリストラに」という現実を目の当たりにしているからではないか。

図7
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図7

ではリストラの宣告を受けたらどうするのか。驚くのは「退職に絶対に応じない」は約10%であり、「必要ないと言われれば本望、応じる」「条件次第で応じる」という人が約90%もいたことである(図7)。それぞれ気持ちは複雑であろう。しかし、ショックのあまり自暴自棄になるのは危険だ。大手再就職支援会社の役員は「退職に応じた2割の人は会社に対する不満や恨みを抱え、それがいつまでも尾を引き、再就職先が決まらないという事態も起きている」と話す。残された家族のことを考え、簡単に同意の判子を押すのではなく、もっと踏みとどまってもいいのではないだろうか。

※すべて雑誌掲載当時

【調査概要】5月22~25日にかけて、gooリサーチとの共同で、インターネットを通じて20~50代の正社員1045人にアンケート調査を行った。うち男性76%。

(ライヴ・アート=図版作成)