世代別に見ると、20代は「辞任すべき」が28%であるのに対し、「辞任はしなくとも責任は明確にすべき」が42%と比較的経営者に寛容だ。しかし、中堅層の40代は「辞任すべき」が45.7%とほぼ半数を占める。リストラそのものはしかたがないにしても、やる以上は「経営者の首を差し出せ」という厳しい姿勢をのぞかせている。長期的ビジョンなしにコスト削減目的で安易にリストラに踏み切る経営者はこの数字を直視するべきだろう。仮にリストラにより経営効率が一時的によくなったとしても、成長軌道に乗る保証はなく、逆にリストラが成長を疎外する要因にもなりかねない。

図5
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それを裏付ける結果も出ている。会社がリストラを実施したことがあると回答した人に、実施直後に自分や職場にどんな変化が生まれたかについて聞いた。最も大きな変化は「仕事に対するモチベーションが下がった」(41.5%)であり、続いて「仕事の負担が増えた」(38.9%)が多い。さらに「会社や経営陣に対する信頼感を失った」が35.1%を占めている(図5)。

一度下がったモチベーションや会社への信頼感を回復するのは容易ではない。リストラは想像以上に経営に手痛いダメージを与えることを示している。

もちろんリストラを全否定するつもりはない。やむにやまれぬぎりぎりの選択肢として踏み切らざるをえない場合もあるだろう。しかし、調査結果に表れているように相当のリスクを覚悟すべきである。リストラは社員に極度の不安感を与えるため、迅速な実施が望ましい。だが、平成不況期には経営計画の見通しの甘さから希望退者職募集を二次、三次と複数回にわたって実施した企業もあった。

そうした企業の社員の間には仕事の負担感に加え、「次は自分の番かもしれない」という疑心暗鬼も芽生える。ある大手流通業は複数回の人員削減策により社員の心身を疲弊させたうえ、資金回収を恐れた納入業者からの仕入れまで滞る事態になり、ついに客足まで遠のき、倒産に追い込まれている。

退職者のフォローは、残った社員の不安や不満を和らげることもある。大手再就職支援会社の役員は「計画数のノルマ達成のみにとらわれ、安易な削減を強行すれば、社員の恨みを買うだけではなく、残された社員にも不安感を与える。経営トップを担ぎ出し、これまでの労苦を謝する誠心誠意の姿勢を示して社員の納得を得ると同時に、再就職決定までできる限りのフォローをすることが大事だ」と指摘する。