ナチスによるユダヤ人虐殺との決定的な違い
ユダヤ人がなぜ抹殺されたのかと言えば、ドイツの社会からユダヤ人の要素を一掃するためです。
一掃して、ユダヤ人の居場所を、ヨーロッパのどこにもみつけられなかった。ユダヤ人を抹殺しても、ナチスは痛くもかゆくもない。だから、奇妙なイデオロギーに基づいて、国家的な大犯罪を起こしてしまった。
中国が少数民族を抹殺すると、中国は痛いんです。困るのです。中華民族は、漢民族を超えた、少数民族も含む政治団体であって、そのテリトリーは漢民族の倍ぐらいある。それを考えれば少数民族の独立などはありえない。国家の存亡に関わることなのです。
ということを中華人民共和国は主張しているので、それを実現させるまでこうした思想改造プロジェクトは続くだろうと思います。
「思想改造プロジェクト」の行きつく先は台湾侵攻
この思想改造プロジェクトは今、着々と進行しつつあります。
内モンゴルでは2020年9月から、従来モンゴル語で授業を行っていたモンゴル系公立学校で、モンゴル語での授業を禁止し、中国語(漢語)で授業を行うように決定しました。モンゴル人から言語を奪うための決定です。
これもウイグルと並行する政策だと思います。どう並行しているかと言うと、モンゴルは北と南に分かれていて、北はモンゴルという国になっている。南は内モンゴルとして中国の一部にされてしまっている。
モンゴルは本来、ひとつの民族ですから、民族自決の原則からいえば、モンゴルと内モンゴルが合わさってモンゴル国になるはずです。それは、トルコ系の人びとが東トルキスタン(ウイグル)と残りの地域とで合わさって、トルコ系の共和国をつくるのが自然なのと、同様のことですね。
でもそこに中国の国境線があって、その南側の内モンゴル人を中国人につくり替えようとしている。同じプロジェクトなんですよ。
これには中華人民共和国と中国共産党の存在理由がかかっている。存在理由がかかっているから絶対にやるはずです。
このプロジェクトは、台湾の解放でピリオドを打つ。台湾の解放は、文字どおり中国とアメリカが正面衝突する話です。アメリカと正面衝突しようとこのプロジェクトは実行しなければならないというのが、中国の指導部が今、考えていることだと思います。
この話の最後はそこに行き着くと思いますが、その前に、新疆ウイグルの苛烈な政策の本質をしっかりと押さえておきましょう。