ワクチン接種が進めば、富裕層は海外に向かう

中小企業オーナーや医者、弁護士、外資系金融機関勤務のサラリーマンなど年収が2000万円から2億円のレンジのひとたちは、毎年2~3回海外に出かけて、そのたびに100万円ほど旅行費用を使う習慣があるのですが、その予算がコロナでたっぷり余ってしまった。この消費需要が昨年は星野リゾートにも流れてきたはずです。

そしてこの層のこの予算は、今年の秋から冬にかけては、このままワクチン接種が進んだと仮定した話ではありますが、確実に海外に向かうはずです。ここで「今年の後半は去年と違ってくるかもしれない」という読みを外すと、星野リゾートに限らず昨年好調だった高級旅館・ホテルはあてが外れるリスクがあると思います。

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2つめに昨年のGoToで顧客の価格相場感に狂いが生じている点です。私も経済評論家として実地調査を兼ねてGoToトラベルを利用してみましたが、旅行パックを使えば新幹線代と宿泊代あわせて1人1泊上限2万円が戻ってくるという大サービスでした。

この制度のおかげで星野リゾートだけでなく日本全国の高級ホテルや旅館に、これまでとは違った客層が押し寄せたという報告が相次ぎました。実際そうだと思います。星野リゾートの高級ブランドである「星のや」や「界」といった高級リゾートは通常であれば2人で旅行したら1泊6万円から8万円は覚悟が必要です。でもGoToのおかげでそれがひとり1万5000円から3万円で楽しめる。

GoToトラベルの「副作用」というリスク

この需要が今年、GoToのルール変更で減るリスクもありますが、それ以上に大きいのが、顧客の頭の中にある「価格のアンカー」が狂ってしまうことです。

一度、1泊1万5000円で豪華な旅を楽しんでしまうと、それが3万円に戻ったときに何かとても損をしたような錯覚が起きる。これを経営学では価格のアンカーが狂うという言い方をします。

GoToトラベル自体はコロナ禍で瀕死の観光業界を維持する政府の施策としてとても重要だったというのが私の認識ですが、その副作用は確実に観光業界に影響を及ぼすはず。星野リゾートにも「高い」と感じさせる影響は出てしまう。ここがふたつめのリスクです。

そして3つめのリスクが存在します。ここまで書いてこなかった話ですが、星野リゾートは運営特化企業として成長する中で、サブブランドに力を入れ始めています。ひとつが都市観光ホテルブランドの「OMO」で、もうひとつが若者をターゲットにした「BEB」ブランドです。