「パクられる覚悟」があれば明日からでもオッケー

筆者の見るところ、近年では半グレの低年齢化が進んでおり、暴力団のような下積み期間が無いために加入のハードルも低い。筆者が取材した半グレは、次のように述べ、ハードルの低さに言及した。

「半グレは盃がないからスタートラインに立ちやすい。明日からでもオーケー。用意するとしたら『パクられる覚悟』だけ。でも、カッコだけで入ってくるバカは、これが分かってないやつが多いですね」

写真=iStock.com/kuppa_rock
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暴力団、元暴アウトロー(社会復帰に失敗した暴力団離脱者や計画的な偽装離脱者で、常習的に犯罪を行う者)も半グレと協働している。こうした実態から、マスコミ報道等において、集団で犯罪を行う者を半グレとくくる傾向には注意を要する。

民暴の専門家である東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長(当時)の齋藤理英氏は、東京商工リサーチのセミナーで半グレの存在に警鐘を鳴らしている。

「半グレは定義が曖昧だが、新たな反社会的勢力と評価して差し支えなく、準暴力団や暴力団偽装離脱者などを含む概念だ。半グレの実態は半分どころか全部グレている」と(2019年12月19日開催「特別情報セミナー 反社リスクに備える・与信担当者が知っておきたい反社対策」)。

半グレとされる集団は全部グレている

齋藤弁護士の指摘通り、半グレとされる集団は全部グレており、暴力団の偽装離脱者までをも含む曖昧な概念である。つまり、犯罪者を十把一絡げにした半グレというネーミングが、当該集団について曖昧さを助長している可能性がある。

2019年9月から11月にかけて、筆者は半グレのメンバー5名と面談した。併せて、法務省保護局による更生保護就労支援の一環として、特殊詐欺に関わった3名の支援を通し、半グレの実態を聴取した。さらに、「博多金塊強奪事件(2016年)」の主犯である元半グレN氏(40代)と文通し、聴取した内容を当事者目線でチェックしてもらった。

その結果、青少年非行の延長線上にある半グレ集団と、犯罪傾向が顕著な職業的半グレとは同一視できないとの考えに至った。先述した通り、半グレの定義は曖昧である。筆者は、10代の不良も、20代の青年も、40代の元暴アウトローも一緒くたにして、半グレとくくるのは大ざっぱすぎるのではないかとの疑問に端を発している。

もっとも、マスコミ報道などで用いられている「半グレ」という呼称に異を唱えるつもりはない。今後、犯罪学者等により、半グレの調査・研究が活発となって適切な定義・分類がなされること、それぞれの特性に応じた対策を講じることは、将来的な課題であろう。