人は何をきっかけに「半グレ」になるのか。龍谷大学嘱託研究員の廣末登さんは「普通の人生を歩んでいても、無知ゆえにプロの犯罪者から利用されて半グレに転落するケースがある」という――。
夜道で女性の後を歩く男性のぼやけたシルエット
写真=iStock.com/AlexLinch
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たった一度の過ちで人生を棒に振る可能性がある

前編から続く)

前回の記事では、半グレの実態をタイプ別に整理した。後編となる本稿では、筆者が出会った半グレ青少年の背景をリアルに概観し、半グレ対策の現状と課題に言及したい。

筆者が最も危惧するのは、闇バイトなどを通じて、若者が半グレに加わることである。しかし、そこには「おいしい儲け話」などはなく、その末路は往々にして悲惨な結果に終わる。現在の日本社会は、たった一度の過ちで人生を棒に振る可能性があることを知っていただきたい。

以下、紹介する元半グレは、いずれも逮捕・補導され、刑事・矯正施設を経験しており、銀行口座が持てないなど、社会権が制約されるに至った人たちだ。彼らの半生を通して、普通の人生の横に口を開ける落とし穴の深さ、暗さ、恐ろしさを、読み取ってほしい。

半グレ青年Aのケース

Aは個人でネットサイト出店から業者とつながり、人生を棒に振ってしまった青年だ。ネットというバーチャルな空間を通して人とつながることが、いかに恐ろしいか、考えさせられる事例である。彼は、筆者と初対面の時、「親玉は中国人だった。怖かった。警察に捕まった時は心底ホッとした」と語った。