工業高校から大手企業に就職して年収は500万円越え

身長は165センチほどで痩せており、知能指数は一般的なレベル。入れ墨などもなく、反社のイメージはない。筆者との面談時点で31歳であったから、犯行時の年齢は27歳くらいだ。特徴的だったこととして10近い資格を所持しており、その中には、難易度の高い国家資格も複数含まれていた。

調査票における性格特性としては、「明るく社交的で、活動性も高いが、軽率で調子に乗りやすい」との所見が得られている。実際、自身がインターネットの個人出店で、月に30万円程度もうけていたことから、インターネットに潜む犯罪および危険性に対する警戒心は低く、取り調べ面接時にも「こんなこともあるのですね」等と発言していた。

青年Aは両親の元、長男として地方の都市に生まれた。5歳の頃に両親が離婚し、母親に養育されている。7歳の時に母親が再婚し、8歳の時、異父弟が誕生したが、障がいがあり介助が必要だった。

18歳の時に工業高校を卒業後、大手企業に就職しており、年収は500万円を越えていた。21歳で結婚しており、一般的なサラリーマンとして順風満帆な社会人スタートを切ったといえる。

24歳の時、知人の紹介でネットワークビジネスを始めた。この年子どもが生まれている。27歳の時、ネットワークビジネスと並行して、インターネットビジネス(ネットオークション)を開始。月収は、これらの副業だけで20万~30万円を稼いでいたという。しかし、ある日、会社から帰ると突然、妻から離婚届に署名するように言われたが、理由は不明だった。

暗がりでスマホを見つめる男性のシルエット
写真=iStock.com/kieferpix
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グループの背後には中国マフィアが…

同年、会社を辞め、インターネットサイトの個人事業を開始。ネットの世界で成功するには、人的ネットワークが必要と考え、ネット上で積極的に同業者や異業者と交流を持つように努めた。その中の1人から「お金を運ぶ仕事」の依頼を受けた。

依頼された仕事の詳細を聞いた時、すぐに犯罪行為と気づいたものの、その時点で、グループの背後に中国マフィアが存在すると聞かされ、仕事を断ると家族にも危害が及ぶと脅されて断れなかったと回想する。大手の会社を辞職して、2カ月後に逮捕されるまで、4件の事件に巻き込まれている。28歳で詐欺、窃盗、詐欺未遂の罪で有罪判決を受け、懲役刑に服すことになった。

この青年Aの事例は、一般社会に生活する大人が簡単に犯罪に巻き込まれる可能性を示唆するケースといえる。筆者が驚いたのは、半グレの背後に中国マフィアが存在し、日本国内で特殊詐欺をシノギとしていることである。Aが住んでいたところは地方都市であり、そこをシマ(縄張り)とする暴力団がいるものの、暴排の影響で、シマの管理・統制が十分にできていない現状を垣間見た気がした。