加害者であり被害者でもある「つまようじ要員」
こうした「犯罪の低年齢化」「犯罪のボーダレス化」という現象は、少子化の影響、暴排条例による締め付けで暴力団のシノギが苦しくなったというような事情があるのかもしれない。暴力団や暴力団離脱者のアングラ化を視野に入れて、闇バイトの実態や特殊詐欺実行犯が低年齢化した背景を解明し、早急に対策を講じる必要がある。
先述した青年A、少年BとCは、いずれも刑事・矯正施設に収容され、青春の貴重な時間を奪われ、社会的信用を失い、「犯罪者」「反社」というラベルを貼られている。
犯罪は許されることではない。しかし、彼らは「無知ゆえに」「脇が甘かったゆえに」プロの犯罪者から利用された被害者とも見ることができないだろうか。これが「つまようじ」と評される前回の記事で指摘した「カテゴリー②」に分類される半グレの実態である。
筆者は繰り返し次のことを強調したい。「どこにでもいる不良が半グレになる」「半グレは普通の子(人)を巻き込む」ということを。
特殊詐欺対策の現状と課題
2019年6月25日、政府は犯罪対策閣僚会議において「オレオレ詐欺等対策プラン」を策定している。
プランでは「これまでにも官民一体となった各種対策が講じられてきたが、これに対抗した犯行手口の巧妙化・多様化も進んでおり……被害状況は高水準で推移している」点を確認し、「最近では、高齢者から電話で資産状況を聞き出した上で犯行に及ぶ手口の強盗事件が相次ぎ……特殊詐欺の被害者は、65歳以上の高齢者が約8割を占める犯罪の巧妙化、多様化」につき警鐘を鳴らす。
さらに「特殊詐欺事件の背後にいるとみられる暴力団、準暴力団、不良外国人、暴走族、少年の不良グループ等の犯罪者グループ等を弱体化し、特殊詐欺の抑止を図るため、各部門において多角的な取り締まりを推進する」と述べ、具体的に半グレ等の取り締まりに言及している。
オレオレ詐欺等対策プランを見ると、病理集団=暴力団と見る旧来の傾向は改められつつある。暴力団以外の病理集団による犯罪が増えるなか、ようやく政府は半グレ等の対策に本腰を入れ始めた。