半グレによる犯罪が増え続けている。なぜここまで問題が深刻化したのか。龍谷大学嘱託研究員の廣末登さんは「半グレとされる集団は全部グレており、暴力団の偽装離脱者までをも含む曖昧な概念だ。つまり、犯罪者を十把一絡げにした半グレというネーミングが、当該集団について曖昧さを助長している可能性がある」という――。
匿名のハッカーが暗闇でスマホとパソコンで何かしている
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更生保護の現場でも目に付く半グレの犯罪

半グレによる犯罪が止まらない。もはや、誰が半グレで、誰がそうではないのか、アングラ専門の「ヤクザ博士」と呼ばれる筆者にも分からなくなりつつある。

この原稿を書いている5月にも、さまざまな犯罪報道があった。

少年らを使って大麻を密売していたとして、準暴力団「チャイニーズドラゴン」のメンバーの男が逮捕された事件。大麻を共同で所持したとして、慶応大の女子学生らが逮捕された事件。新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」をだまし取った疑いで、北海道札幌市の会社経営の男らが再逮捕、福岡県北九州市の会社役員と自営業の男らが逮捕された事件。特殊詐欺グループで受け子の統括役をしていたとして、ベトナム人の男ら2人が逮捕された事件。とりわけ詐欺と薬物に関する事件が目に付く。

筆者は2018~19年度に、法務省保護局の福岡県更生保護就労支援事業所長の職にあり、罪を犯した人たちと接してきた。彼ら彼女らの罪種は、生まれながらに不幸な境遇にあって社会的ハンディを負い、生きづらさから窃盗、覚醒剤乱用、傷害致死などの犯罪を犯した人などさまざまである。

そうした中で、目に付くのが詐欺犯罪である。この犯罪の対象者は、10代の若者から40代の会社員まで幅広い。なかには名の知れた企業に技術者として在籍していた人も居た。

誰もが人生のレールから転落する可能性がある

彼らの話をじっくり聞いてみると、この社会に敷かれたレールの脇には、底なしの穴が口を開けており、誰しも転落する可能性があることを知った。危機感を抱いた筆者は、アングラ社会で活動している半グレといわれる人たちと接触し、調査した。その結果をまとめたのが、2021年2月に上梓した『だからヤクザを辞められない 裏社会メルトダウン』(新潮新書)である。本書は、サブタイトルの「メルトダウン」に重きが置かれている。

メルトダウンは、現在も進行中である。コロナウイルス同様に、半グレも変異を繰り返しながら、さまざまな人たちの人生を食い荒らしており、一刻も早い対策が望まれる。筆者は、世間に警告を発する意味から、この目で見たリアルな裏社会の実態を、前後編に分けて読者の皆さまに紹介する。