暴力団時代に蓄積した人脈や知識で犯罪を行う半グレもいる

さらに③は、①、②と異なり正業を持っている集団である。腕力を競う地下格闘技団体に所属するなど裏社会とのコネクションを築きやすい位置にいる。ITベンチャーの若い社長などのボディーガード的な役割等から、徐々にITビジネス関係に詳しくなり、金融系取引に従事する者たち。あるいは、風俗・飲食店などを経営する小集団を指す。ただし、彼らは地下格闘技などを通して、①とも交わる集団である。

最後に、④の暴力団並みに犯罪性が強い病理集団、元暴アウトローである。近年、暴排条例の影響により暴力団離脱者は増加傾向にある。しかし、職業社会に復帰して更生する者は僅少である。さらに、離脱者の一千人あたりの再犯率をみると、2011年に離脱した者のうち、その後2年間で検挙された者は、一般刑法犯の再犯者検挙人員と比べ約60倍である(警察庁組織犯罪対策部「平成二十八年における組織犯罪の情勢」)。

暴排条例の規定により「暴力団員等」とみなされ、社会復帰に失敗した者は元暴アウトローとなる。行き場のない彼らは、結局、薬物犯罪や闇金、オレオレ詐欺等の犯罪を重ねる。

また、このカテゴリーにはシノギに窮して偽装離脱した元暴も含まれる。この元暴アウトローがなぜ厄介かというと、犯罪のプロである暴力団に所属していたからである。そこで蓄積された人脈や知識を有するが故に、社会的な脅威といえる。

半グレと青少年不良団、元暴アウトローを同一視する危険性

以上で紹介した性質が異なるグループが、現在、十把一絡げに半グレと見做みなされており、実態が判然としない。特殊詐欺等やミカジメ徴収、薬物販売に関係する者たちが半グレだというのであれば、正しくは①③のカテゴリーに属する者たちであろう。

廣末登『だからヤクザを辞められない 裏社会メルトダウン』(新潮新書)
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②の青少年非行の延長で犯罪に手を染めている者は、いわゆる青少年不良団である。見方を変えれば無知ゆえの被害者であり、社会的援助や支援サービスの提供によっては更生の可能性がある。

筆者がオフレコで新聞記者に調査依頼したところ、特殊詐欺に関与した未成年は銀行口座が開設できない者もいることが分かった。これでは、彼らの更生の機会を奪い、成功の望みの無い細い道に追い込む結果となるので、再犯の可能性が否めない。

④の者は、警察では「暴力団員等」という範疇に分類されている。筆者は、このカテゴリーに関しては、暴力団現役時代に犯罪スキルを磨き、犯罪的ネットワークを有する元暴アウトローとして、半グレとは別枠で把握すべきであると考える。

以上、筆者の見聞きした範囲で、現時点における半グレの実態を整理した。後編では、実際にどのような人たちが半グレになっているのかというリアルな疑問に応えたい。その上で、政府による半グレ対策の現状、筆者が考える半グレ対策の懸念などにつき、言及したいと思う。

(後編に続く)

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