職人工房からコミュニティへ:「コルクスタジオ」の試み

僕が構想し実践する「コルクスタジオ」とはどういうものか。ひとことで表すとすればそれは、チームで効率よく漫画づくりをしていくための「場」です。

これも韓国や中国から学んだところですが、彼らはすでにチームで漫画をつくる体制を整えている。漫画家とアシスタントがいる「漫画家事務所」のようなかたちではなく、小さいアニメスタジオみたいな組織と環境をつくり、分業で作品をつくるようになっています。

従来の日本の漫画づくりでは基本的に、漫画家と出版社の編集者がコンビを組んでコンテンツをつくっていましたが、これからは4~5人でチームを組んで作品をつくるかたちに変えていったほうがいい。コルクスタジオではすでにそうしています。

4~5人が分業で作業を進めるというのは、たとえば原作、線画、カラー、演出、推敲、監修などに受け持ちを分けて漫画をつくっていく。そのほうが確実に完成までの時間は短縮できるし、アウトプットの量も安定します。

分業化は新人漫画家たちの成長も促します。ひとりで作品完成までのすべてをこなせるようになるには数年かかるでしょうけど、分業して特定の狭い分野のスキルをひとつずつ磨いていって、気づけば必要なことは何でもこなせるようになっていたという仕事の覚え方のほうが、明らかに短期間で成長できます。

スタジオを運営していく側からすれば、所属のクリエイターを育てているという感覚はもはやありません。こちらが育てるのではなく、漫画家たちがお互いに教え合ったり、いっしょに学んだりするコミュニティをつくるということが重要なのです。

写真=iStock.com/gorodenkoff
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複数の漫画家が刺激し合い、高め合う「スタジオ」

コルクスタジオでは、お互いに学び合う環境をつくり雰囲気を醸成していたところ、ストーリーづくりの過程にまで漫画家同士のいわゆる「アクティブラーニング」が起こるようになってきました。

以前の漫画制作現場では、漫画家が原稿を描いて持ってきて、編集者がそれに対してフィードバックして磨きをかけていくという流れが普通でした。コルクスタジオは違う。漫画家同士が原稿を見せ合い、率直に議論し合うということが当たり前に起き出しているのです。

コルクスタジオのしくみのモデルとなっているのは、明らかに『ドラゴン桜』です。

パート2では早瀬菜緒や天野晃一郎ら生徒たちが、教師のフォローを受けながらも、みずから協力し合い成長していった。そうした「場」を、今度はリアルの世界で漫画家たちに築いてもらおうとしている。

「頑張らない」「しくみやテクノロジーに頼る」「仲間とともに楽しみながら目標へ向かう」といった『ドラゴン桜2』の作中で提唱してきた方法論が、コルクスタジオの中でも実践されているところです。