「リアル・ドラゴン桜」スタイルで事業を展開
コルクスタジオというしくみをつくって世界に追いつこう! その方向に舵を切るに際しては、僕の中で『ドラゴン桜』の影響が大きかったと感じています。
『ドラゴン桜』は自分にとってすごく重要な作品です。僕の人生はいつも『ドラゴン桜』とともにあるなとよく思います。
『ドラゴン桜』には、2003年に連載が始まったパート1と、2018年連載開始のパート2があり、内容やテーマ設定はかなり違っています。「1」では、落ちこぼれ生徒の水野直美と矢島勇介が野心家の弁護士・桜木建二に導かれて東大を目指し、暗記や長時間勉強でスパルタ式に鍛えられていく。
新卒で講談社に入って2年目のとき、僕は三田紀房さんとともに『ドラゴン桜』の連載をスタートさせました。当時の僕はとにかく「ヒット作を出すぞ!」と意気込んでいて、がむしゃらに頑張る以外の方法を知りませんでした。水野・矢島と同じように、たくさんのことをむりやりにでも暗記して、必死に成績アップ・実績獲得を目指していました。
作中で紹介している勉強法やスキルアップ術を仕事の現場で実践して、結果を出そうとしていたわけです。自分自身のやっていることがすでに「リアル・ドラゴン桜」でした。
起業とつまずき
講談社で10年仕事をしたあと、僕はコルクという会社を立ち上げて社長になります。
起業してしばらくのあいだ、僕は出版社にいたころと同じように仕事をしていました。自分はこんなに努力して頑張ったぞ、みんなも同じように努力して頑張ってね、というスタンス。
会社員時代は自分を律して己に影響を与えればよかったけど、今や社員にもいい影響を与えなければいけないのだから、みずから範を示さなければ。そんな考えに凝り固まっていたのです。
それでどうしても、スタッフと齟齬が生まれることがあった。「なんでこっちの思ったように動いてもらえないんだろう……」と。立場がプレーヤーから経営者に変わったのなら、周囲への接し方も変わらないといけなかったのに、僕はそこにしばらく気づけなかったのです。