自動車向けの半導体は、供給が後回しにされてしまう
TSMCは2021年の設備投資計画を7%上方修正し、過去最高の300億ドル(約3兆3000億円)にすると発表したが、会見に臨んだ魏哲家・最高経営責任者(CEO)によれば「供給不足の解消時期はスマートフォン向けなどの先端品が22年、自動車向けなどの一般品が23年になる」という。
自動車向けの半導体は価格が安いため、利幅の大きい5G向けなどの先端品より供給が後回しにされてしまう。日本車メーカーはこうした対外依存脱却のためにルネサスからの調達を強化しているが、不幸にも火災事故の発生で供給が止まってしまった。
日本の自動車業界は裾野が広いため、半導体不足で生産が止まると、そのほかの部品メーカーだけにとどまらず、鉄鋼や樹脂などの化学メーカー、販売店などにも影響がでる。こうした業界の雇用にも響いてくるため、経済産業省も対策を講じ始めた。
日本はTSMCなどにまだ勝てる可能性はあるのか
雇用だけではない。自動運転やコネクテッドなど次世代車の性能は半導体の質に依存する。ライバルに打ち勝ち、差別化のカギとなるのは半導体やそれを操るソフトウエアになる。アップルやアマゾンなどGAFAが自動車に参入してくる中で、最強と言われるトヨタと言えども、高性能の半導体がなければ、GAFAには太刀打ちできない。
自動車業界だけでなく、ファナックや東京エレクトロニクスなど世界に冠たる工作機械の精密制御などにも高度な半導体が必要になってくる。膨大な情報処理能力を瞬時にさばける性能をもった半導体なしには日本のモノ作りもおぼつかない。
それでは、日本はTSMCなどにまだ勝てる可能性はあるのか。同社は世界で最先端となる回路線幅が3ナノ(ナノは10億分の1)メートルに続き、2ナノの世界最先端品の工場の建設に着手した。来年発売予定のiPhoneに搭載する3ナノ品の約半分はアップルが買い占めた。TSMCはさらにその先をいく。韓国サムスン電子といえども、水をあけられ始めている。
こうしたなか、1980年代に半導体で世界を席巻した日本が、復活を目指すために開発を急いでいるのが「光半導体」。その中核となるのがNTTだ。