NTT澤田社長「半導体の世界でゲームチェンジができる」
スマホに加え、人工知能(AI)やIoTが普及するにつれ、データ通信量は加速的に増えていく。データを高速処理するためには半導体のなかで電気信号を運ぶための大量の電力と、装置を一定規模に抑えるために半導体の微細加工技術が必要となる。脱炭素の流れが加速する中で、安価に電力を供給できる石炭火力やガス火力は世界から締め出されつつある。原子力発電への抵抗も根強い。また、自動車やスマホ、パソコンなどは一定の大きさの中に半導体を埋め込まなければならない。そのためには半導体の微細化は不可欠となる。
しかし、半導体の微細化を進めれば進めるほど、電気が熱を持ってしまうため、回路がショートする可能性は高まってしまう。「消費電力と微細加工の限界をどう乗り越えるか」というのが、次世代半導体開発で避けて通れない課題となっている。
この解決策としてNTTが掲げるのが、半導体のなかでデータを運搬する役割を果たす電気を光に置き換える「光半導体」だ。光は熱を持たず、電気より高速のため、ルーター、サーバーなどにも展開すれば、「半導体の世界でゲームチェンジができる」(澤田純・NTT社長)という。
NTTが「IOWN」と名付けるこの光デバイス構想にはソニーのほか、スマホの半導体競争でクアルコムに敗れた米インテルもコアメンバーとして名を連ねている。米マイクロソフトなども参加し、来る「6G」の世界での覇者を目指している。
中国も日本メーカーの技術は喉から手が出るほど欲しい
英投資ファンドCVCによる買収に絡み、主導した車谷暢昭社長兼CEOが退任するなど経営が混乱する東芝の半導体子会社や、ルネサスを買収しようとする米系海外投資ファンドの動きが相次いで表面化している。米中分断で不足する半導体の価格は高騰し、それが半導体メーカーの株価を押し上げ、巨額な投資リターンを得られるとの読みからだ。しかし、アップルなどスマホメーカーや大手の通信機器メーカーのさまざまな要求を一手に引き受け、協力を得ながら地力をつけたTSMCを覆すのは容易ではない。
ただ、TSMCにしても、サムスン電子にしても半導体を生産する半導体製造装置の世界では、まだ日本は世界と戦える立場にある。米半導体製造装置大手のアプライドマテリアルズは日立製作所系の「KOKUSAI ELECTRIC」の買収をしかけるなど、日本の技術には注目している。
結局、この買収案は中国政府が独禁法上認めず、破談となったが、このことは逆に中国も日本の半導体製造装置メーカーの技術を喉から手が出るほど欲しがっていることの証左だ。この分野はNTTが目指す「光半導体」の製造などにも生かせるはずだ。
「データ爆発」の時代、半導体は産業のあらゆる分野で高い性能を求められている。その性能の良しあしがすべてを握る時代に、日本は国を挙げて次代の半導体戦略を打ち出す必要がある。