「30年、40年スパン」で考えたメリットを伝える

もうひとつ自分にとってイヤなことが起こるとそのことばかりが気になって、視野を狭くしてしまうことが起こります。

その時の視野の広げさせ方ですが、「視野を広く持って考えてみよう」と声をかけるよりも、

「近視眼でなく、30年、40年というスパンで考えると、関西からキャリアをスタートさせるメリットがあるんじゃないかなぁ」

という示唆の方が、効果的かもしれません。

例えば、英語を母国語としない人がアメリカにMBA留学する時、英語でのコミュニケーションにまずは慣れるため、サマースクールとかプレMBAとかいわれる3カ月程度の英語の集中講座を受けてからビジネススクールに入学するケースが一般的です。

この時、西海岸のビジネススクールに入学する人は東海岸のサマースクールに参加し、逆に東海岸のビジネススクールに入学する人は西海岸のサマースクールに参加することが推奨されています。

写真=iStock.com/georgeclerk
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アメリカは西海岸と東海岸では別な国と思えるくらいに全くカルチャーが異なるので、せっかく留学するならその双方を体験すべきというのがその理由です。

「同質社会」にはない刺激を得られるチャンス

西海岸のビジネススクールに入学が決まった私も、そのことを聞いていたので、東海岸のニューヨークの大学でのサマースクールに3カ月参加しました。

東海岸は、とにかく英語が早口で聞き取りにくく、人種差別も激しく、「英語でコミュニケーションが取れないのはお前のせいだ」と言わんばかりに、拙い英語に合わせることはしないスタンスです。

一方、西海岸は元々移民も多く、英語が拙い人も多いので、こちらのレベルに合わせてゆっくり話したり、分かりやすく話してくれる配慮もあります。

同じ国なのにそれだけ違うことを体験できたのは、その後のキャリアや人生でものすごくプラスになりました。

そうした30年、40年の時間軸で考えてもらう他に、人との「出会い」で考えてもらう方法も「アリ」です。

実は私たちビジネスパーソンというのは、結構な同質社会に生きています。

同じような家庭に生まれ、同じような学校を出て、同じような企業に就職するといった似た者同士というわけです。そうした同質社会では刺激が少ないので、イノベーションが生まれにくいというデメリットがあります。

そういう意味では、関東に生まれ育って関西配属というのは新鮮な出会いが多く、「同質社会」にはなかった刺激を得られるはずです。

「自分で考え、動く」を引き出す言い方
「せっかく関西支社の配属になったのだから~」
「せっかくアプリケーション開発部門に配属になったのだから~」

⇒起こった自分にとって歓迎しない事態の頭に「せっかく」をつけてその後に続くことを考えさせる
「近視眼でなく、30年、40年というスパンで考えると、関西からキャリアをスタートさせるメリットがあるんじゃないかなぁ」
⇒長期的な視点で考えさせる