密で近いコミュニティーがマイナスに

目立つのは、仕事での不当な扱いだ。

30代女性は「職場からの出勤拒否、左遷」を打ち明け、40代女性も「病院や保健所からは、仕事への復帰許可が出ていたが、職場の上司から周りの従業員が不安になるので、しばらく休むように言われた」という。

また30代男性は、「同業者から嫌がらせを受けた」と記した。

別の30代女性は「療養を終えて仕事復帰しましたが、コロナに感染したということで仕事をキャンセルされました。理由は現場に私が入るとみんなが不安になるということでした」と、丁寧な言葉遣いの中にやるせない気持ちが垣間見える。

離島という沖縄特有のコミュニティーの小ささが影を落とした様子もうかがえた。沖縄では、初めて会った人でも、たどっていくと共通の知人がいることは珍しくないし、「実は親戚だった」と分かることさえある。密な地域との関わりや人間関係のおかげで助けられることも、よくある。ただ、その近さが感染をめぐってはマイナスになった場面があったようだ。

30代男性は、「自分の地域で噂になり、あまり(人が=筆者注)近づかない」と孤立感を深め、40代男性は「家の前を通ると『感染する』や、『仕事に来ないでくれ』と言われた」と嘆いた。

「周りに感染させていないか」という不安が最多

「家族が近所の方から避けられた」(30代男性)というケースもあった。感染した本人ばかりでなく、家族にまで差別が向けられたことが分かる。

一度、アンケートに答えた後で、「具体的な体験を書いてしまい、特定されるかもしれないから、該当部分を削ってほしい」と連絡してきた人もいた。

筆者撮影
外出自粛で人けのない沖縄都市モノレールの駅=2020年5月

感染した人たちはそもそも、感染したこと自体に対して心理的な負担を感じていることが多い。

アンケートでは、感染が分かった時に「不安があった」と答えたのは94人、全体の9割に上っている。その不安の内容を尋ねてみると複数選択で、「周りの人に感染させていないか」が85件と最も多く、自らが感染源となることを恐れていることが分かる。それは、「後遺症」(63件)や「重症化のリスク」(45件)といった自身の体調への不安より多い。

感染すれば、本人が療養するだけでなく、家族や職場の同僚、友人など周りの人が濃厚接触者になって自宅待機を余儀なくされる。とはいえ、自らの体調を心配するより周りを慮るとは、少々行き過ぎのようにも感じられた。