治癒しても差別や偏見は根強い
この1年、「新型コロナウイルス」という言葉を聞かなかった日はない。そして私たちは、この未知のウイルスに関する大量の情報に触れ続けてきた。「未知」の部分は少しずつ小さくなり、「分かってきたこと」が増えたはずだ。
WHO(世界保健機関)は、有症患者の退院基準を発症日から10日間と定めている。これは10日たてば、周囲への感染性が弱まったり、なくなったりするという研究結果があるからだ。それなのに、アンケートからは根強い偏見がうかがえる。
「治癒したにもかかわらずウイルスを撒き散らすのでは? 近寄ると感染するのではと敬遠される」(60代男性)、「退院後もまだ感染していると思われている感があった」(40代男性)との声は、誤解や正確な知識の不足が、差別や偏見につながっていることをはっきり示している。
無知や思い込みが感染者を追い詰めている
感染を経験して、アンケートに回答してくれた104人。その数は、沖縄県の累計感染者約8000人、全国の約43万人に比べたらほんの一部にすぎない。それでも、当事者が紡ぐ言葉の一つひとつは重い。
「正しい情報の収集と発信をタイムリーに」(60代男性)、「全体でコロナに対しての知識を上げること」(20代男性)。
その声を集めることで、差別や偏見を抑えるには何をすべきか、見えてきた気がする。「誰が感染してもおかしくない」世界では、次に感染するのは私かもしれないし、あなたかもしれない。私たち一人ひとりが、正しい情報を集めて知識を積み重ね、それに基づいた行動をすること。より大切なのは、無知や思い込みで、感染して苦しんでいる人をそれ以上、追い詰めないようにすることだ。
そうすることが、誰にとっても生きやすい社会につながるはずだ。