心ない言葉は濃厚接触者となった人からも…

実際に感染が広がってしまう場合は、苦悩がさらに深くなる。

自身が感染して、家族も感染したという30代男性は「自分だけならまだしも、家族にも迷惑をかけ、いろいろあり精神的にキツかった」と苦悩をつづった。また別の30代男性は「職場や家族にかなり迷惑をかけることになり、つらい。家族は家族で大変な状態になるため、相談できる相手はなく、自分で抱え込まざるを得ない」と苦しい胸の内を明かした。

そのような心理的負担を抱えているところへ、周りからの非難は追い打ちをかけることになる。

50代男性は「『君から感染した』と言われ、非難された」と吐露し、20代女性は「私の濃厚接触者になった人から『働けなくなったら給料が減る』と強く非難された」とあけすけな不満をぶつけられた事実をつづった。

「職場復帰したとき気持ちがうつになっていた。人が怖く感じる」と追い込まれた50代女性もいた。もっとはっきり、「加害者扱い」されたと書いた50代女性は「どこから感染したか分からないまま、周りに迷惑をかけることの苦しさ。誰も悪くないと分かっているけど、感染者の当の本人はいつまでも、やりきれない気持ちが続く」と訴えた。

「悪いことをしたに違いない」と考える特有の道徳観

ふだんなら、何か病気になっても、本人はもちろん周囲もそのことをこれほど強く責めたりはしないだろう。

新型コロナウイルスが他の感染症と違うのは、世界規模で同時に感染が広がり、感染症の専門家も行政も「いつ、どこで、誰が感染してもおかしくない」と口をそろえるほど、感染させる力が強いことだ。それなのに、なぜ周りは感染した人を非難して、本人もまた自分を責めてしまうのだろうか。

その理由を、社会学者の明戸隆浩氏は、新型コロナ対策の「副作用」と表現する。「国が感染対策を『お願いベース』で始めたために、多くの人が道徳の問題として引き受けてしまい、本人の行動の決定に対する責任が過剰に考えられるようになった。『かかったからには、悪いことをしたに違いない』と、結果から過程を判断する特有のメカニズムが働いている」(2月13日、沖縄タイムス)

会見する玉城デニー知事=2020年2月27日
筆者撮影
会見する玉城デニー知事=2020年2月27日

実際に、「感染した人に何か問題があったように思われる」(30代男性)、「かかった人が悪いという風潮がまだまだあるように感じる」(20代男性)との声は複数あり、「感染=悪」と捉える意識が社会に広がっている様子が浮かび上がった。