新型コロナウイルスの怖さは、その症状だけではない。沖縄タイムスが実施したアンケートでは、感染者104人のうち4割弱にあたる37人が「感染による差別・偏見を感じた」と答え、そのうちの31人が周囲から孤立するといった具体的な体験を打ち明けた。沖縄タイムスの下地由実子記者がリポートする――。
観光客もおらずシャッターの閉まった土産物店が並ぶ国際通り=2020年8月
筆者撮影
観光客もおらずシャッターの閉まった土産物店が並ぶ国際通り=2020年8月

104人の回答が明らかにした社会の歪み

沖縄タイムスは、沖縄県で2月14日に新型コロナウイルスが確認されてから1年となるのを契機に、県内で感染経験がある人を対象にアンケート調査をした。

結果から見えてきたのは、療養を終えても、感染したことが心身両面に大きな負担となってのしかかり続けている人たちの実像だった。

新型コロナウイルス感染を経験した人を対象にしたアンケートの回答用紙
筆者撮影
新型コロナウイルス感染を経験した人を対象にしたアンケートの回答用紙

アンケートに回答したのは、新型コロナウイルス感染症を経験した104人。その一人ひとりの声は、束となることで数が持つ迫力をまといながら、社会の抱えるいびつさを突きつけてくる。

104人のうち、4割弱にあたる37人が「感染による差別・偏見を感じた」と答え、そのうちの31人が周囲から孤立するといった具体的な体験を打ち明けた。身体面では、約半数の49人が倦怠感や息切れなどの「後遺症がある」と不調を訴えた。

「感染を公にできない雰囲気がある」(40代男性)という社会の中で、感染を経験した人たちはどのような体験をして、今、何を思っているのだろうか。

ばい菌扱いに無視、知人から「会いたくない」…

アンケートに「差別や偏見」を感じたと回答したのは37人。その声を一部紹介する。

「誰も近寄らない。ばい菌扱い」(40代男性)
「退院後に仕事の用事でコンビニに行くのを見られただけで出歩くなと怒られました」(30代男性)
「無視」(40代女性)
「コロナ感染して冷たい目線が強く感じた」(40代男性)
「子どもの友人の家族よりクレーム」(50代男性)
「2カ月後に知人と会う約束をしていたが、そのメンバーの1人に『コロナにかかりたくないから会いたくない』と直接言われた」(60代女性)

37人のうち、8割を超える31人が任意の記述回答欄に具体的な体験をつづった。感染したことで周りから、非難されたり、遠ざけられたりといった理不尽な扱いが並ぶ。

20代~60代の男女が記した言葉の数々は、文章の長さも、文体も、バラバラだ。そのことがかえって、体験した差別・偏見が多岐にわたり、しかも深刻であることをリアルに際立たせて、読む側の心をえぐる。