自分の力を注ぐ場所を「間違えていた」だけだった

気づかせてもらったことがあります。

澤田智洋『マイノリティデザイン 弱さを生かせる社会をつくろう』(ライツ社)

仕事にむなしさを感じてしまっていたのは、自分に無力感を覚えていたのは、もしかしたら自分の力を注ぐ場所を間違えていたからなのかもしれない、と。

僕の頭の片隅には、ずっと「あきらめ」という言葉がありました。

「広告はいったい何をしてきたんだろう?」「父親がCMをつくったところで、視覚障害のある息子は見れないじゃん」。でも、福祉の世界に自分の考えた言葉やアイデアがジワジワと染みこんでいくのを見て、思いました。

「まだまだできることってあったんだ」。

そもそもコピーライターというのは、どんな対象であっても、新発見あるいは再発見をし、それをあの手この手で言葉にして、ひとりでも多くの人に伝えるのが仕事です。さまざまな角度から物事を捉えて、いちばん輝くところに光を当てる。そんなことばかりを最高な日も最低な日も、20代からずっと繰り返してきました。

地道な日々の積み重ねが、まだまだ未開拓の福祉の世界で生きると知った。

息子が生まれて、すべてがリセットされてしまった気がしていました。でも、それは間違いでした。広告会社で培ったスキルや経験は、しっかりとセーブされたままだったんです。くすぶっていた日々にも、ちゃんと意味はあったのでした。

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