やめるためには、エネルギーが必要

エネルギーとは、平たく言うと「元気」のことです。人間が生き、考え、活動する際に必要な、根源的なパワーの源。基礎代謝量のように、普通に生きているだけで常にエネルギーは消費されていて、いつもよりも多く活動したり、ストレスを感じたりすると、エネルギーがより多く消耗されます。

一方、おいしいものを食べたり、お風呂に入ったり、眠って休息を取ることによってエネルギーは回復します。

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重要なのは、エネルギーによって、人の感情や意欲、行動も多大な影響を受けるということ。また、「人はエネルギーを使いたくない」という強い傾向があることです。

やめたいときは、新たな環境に移りたいときです。

しかし、エネルギーが低下しているときには、人はそれ以上のエネルギーの拠出をしたくありません。たとえ嫌な環境であっても、その”嫌さ”にある程度慣れてしまえば、ルーティン化していて、省エネになっている部分もあるからです。嫌な上司がいても、その場さえやり過ごせばいいさ、というふうに対処している人も多いでしょう。

ところが、いざやめる決断を下してしまうと、状況は大きく変化します。周囲への根回し、新たな場を見つけるための行動……。これまでの生活にプラスアルファの大きなエネルギーが必要となってしまいます。

エネルギーが低下すると「やめる決断」ができなくなる

つまり、エネルギーに余裕があるときは「やめる」という決断ができる人でも、エネルギーが低下しているときは、やめたくてもやめられない状態になるのです。

もう1つ、エネルギーには要注意ポイントがあります。実は、そんなやめられない状態になっていても、本人は「エネルギーが減っている」という自覚がない、ということです。通常、エネルギーの低下は疲労感で自覚するものなのですが、疲労感は気力や気合いなどでかなり麻痺させることができてしまうのです。

一方、本能的にはエネルギーレベルの低下を察知しているため、全力で変化を避けようとします。やめることを考えようとするのも嫌になったり、無気力になったり、行動を起こす意欲が低下したりします。

やめたい、でも、やめられない。2つの気持ちが葛藤することで、ますますエネルギーが削られ、うつ状態に陥ることもあります。

実際、パワハラで苦しんでうつ状態になっているのに、それでも(だからこそ)「やめられない」人が多いのです。