現代人は不安が過剰反応しがち
エネルギーと自信の低下に伴う(やめるに対する)ブレーキ。しかし、このままでいるのもつらい。どうやってこの先やっていけばいいのだろう、と悩みに悩むと、強まってくるのが、3つめの「不安の拡大」です。
不安という感情についても、ここで簡単に説明しておきましょう。
不安は、あなたの命を守ろうとしている感情です。
突然ですが、私は人間を理解するときには「原始人だったころ」をイメージする、という方法を取っています。文明が発達し生活は便利に快適になったとはいえ、人間の体の機能や感情は、原始人のころからさほど変わっていないからです。このように、原始人に当てはめてみる考え方を、「原始人モード」と名付けています。
では、原始人モードで「先が見えないことに不安を感じる」とは、どういうことでしょう。人は、大きい体や速く駆ける脚、鋭い牙や爪、硬い甲羅を持たない代わりに、「我が身に起こり得るリスクを予知する力」を身につけました。湧き上がる不安に対処する行動を取ることによって、危険を避け、生き延びる能力を身につけてきたのです。
つまり、不安はあなたに降りかかるこの先のリスクを避けようとする、大切な予知能力とも言えます。ただ、不安は生きるか死ぬかの必死の行動を生むので、現代人にとっては、少し過剰発動気味になりがちです。
やめた後の悲惨なイメージを連れてくる「すくませる機能」
「やめる・やめない問題」を抱えているときには、不安が高まりやすくなります。
エネルギーを失い、自信も失っているあなたは、原始人モードでは、敵からの攻撃を非常に受けやすい状態、つまり、命の危機にさらされています。そこで、感情はいつもより強く不安を発動し、あなたを守ろうとするのです。
今の苦しい状態が続いたらどうなるのか、不安は悲惨な未来イメージを次々と見せてきます。未来へのチョイスが1つのときには、不安の切迫感は私たちに必死に対策を考えさせ、対処のための行動を起こさせようとします。つまり、不安は力を与えてくれるのです。
ところが、「やめる・やめない問題」になると、不安の動きが変わります。
今の状況を続けるときの苦しいイメージだけでなく、やめたあとの悲惨なイメージまでも想像させるのです。選択に対し非常に慎重にさせる。私はこれを「すくませる」機能と呼んでいます。原始人モードでは、命がかかっているから、当たり前と言えば当たり前です。情報が少ない原始時代は、軽はずみに決めて行動するリスクより、今、何とか生きていられる住処にしばらくひっそりと身を潜めておいたほうが、生き延びる可能性が高かったのでしょう。
ただ、この状態は現代人にはとてもつらい。いっそう、「決められなくなる」からです。
しかし、不安にただ揺さぶられるままでは、「怖いからやめたい、でも怖いからやめる決心もつかない」というふうに、葛藤は続くばかりです。