「動かない理由探し」をするようになる

やめたい、と思う。たまたまエネルギーが少ないときには、すぐに決心がつかない。これまでの自分の生き方、努力を否定するのもつらい。やめたあと、うまくやれるかという不安も大きい。だからすくんでしまう。

とりあえず現状の苦しさを我慢する生活が長引くことで、ますます疲れてくる(エネルギー低下)。また、決められない自分に自信を失う(自信低下)。こうしてどんどん決断が難しくなる一方で、現状を続ける苦しさも時間とともに限界に近づいていく。

誰かが決めてくれるわけでもない状態だと、こんな大ごとを一人で決断するのが怖くなる。そうなると、次は「動かないことへの理由探し」をするようになります。

ここまでがんばったんだから、とか、ここまで続けたものをやめるのはもったいない、という考えが強くなります。そして、動かない状態が固定化するのです。

このように、エネルギーの低下、自信の低下、不安の拡大という3要素が、まさに三つ巴になり、時間とともに雪だるまのように拡大していくのが「やめる・やめない問題」なのです。

やめることは「死んでしまう」くらい怖い

その人が悩んでいることは、周囲から見れば、軽く「やめればいいじゃん」ですむようなことかもしれません。やめたほうが絶対に楽だ、あなたなら次の道も見つかる、何より、今、すごく苦しそうじゃないか、と周囲は繰り返しあなたを説得するかもしれません。

下園壮太『自衛隊メンタル教官が教える 心をリセットする技術』(青春出版社)
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しかし、現場にいる本人には、まったく違う景色が見えているのです。エネルギーが低下し、自信もなくなり、不安でいっぱいの人は、ブラック企業であっても、そこを途中でやめることが「死んでしまう」くらい怖い。だから、やめられません。

やめられない人の苦しさの本質がおわかりいただけたでしょうか。

今はそれほど悩んでいないけどなぁ、という人もいるでしょう。しかし、このまま苦しさをごまかし、疲労をため、課題を持ち越していくと、いくら精神的にタフな人でも葛藤が大きくなり、「やめる・やめない問題」が人生の大問題に肥大していく可能性が大きい。「やめる・やめない」こと、「あきらめる」ことは、複雑で、乗り越えるには高度なテクニックが必要です。時間も必要です。

残念ながら、この難しさは変えようがありません。

しかし、この難しさを解きほぐしていくコツがあります。変えようがないことを切り分け、あなたの力で「変えていける」ことができるのです。

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