転職が成功する人と失敗する人は何が違うのか。心理カウンセラーの下園壮太氏は「仕事をやめてうまくいく場合と、いつまでも挫折感を引きずる場合がある」という。上司のパワハラで転職をしたAさんとBさんの例を紹介しよう――。

※本稿は、下園壮太『自衛隊メンタル教官が教える 心をリセットする技術』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

女性
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3大要素をケアして、新たな物語を作れるか

「やめる・やめない問題」をいかに前に進めていくか。その秘訣は、「やめる・やめない」というテーマを抱えつつ、もつれてしまった3大要素、つまり、

・エネルギーの低下
・自信の低下
・不安の拡大

この3つをしっかりケアし、新たな物語を作ること。これに尽きます。

私たちは「やめたくなったときの対処の仕方」など、学校で教わったことがありません。

人は、「やめる・やめない問題」に直面したときに、とりあえず自分の引き出しに入っている価値観や対処法を取り出して、前に進もうとします。そして結論として「やめる」ことができたとしましょう。ところが、「やめる」という行為が結果オーライになる場合と、いつまでも挫折感を引きずる場合、というように、大きな違いになることがあるのです。

ここでは、対照的な2つの事例を見てみましょう。

上司からパワハラを受けていたAさんとBさん

事例〉パワハラで会社をやめた人のその後

AさんとBさんは、30代前半の会社員で、勤務先は違えども、同じように直属の上司から同じようなパワハラを受けていました。

上司は、事前に意見や状況を確認することなく、急に仕事を命じます。「すみません、今は、別件で手が塞がっているので、少し時期を後ろにしてもらえませんか」と言うと、「たいした売上も上げていないやつが、文句を言うなよな……」と周囲に聞こえるように嫌みを言います。会議で難しい議案になると必ず指名し、「何で黙ってるんだ?」と高圧的に責めます。同僚たちは、「マークされたね。でもいつかは終わるよ」と、遠巻きに見ています。あるときには帰社しようとするところを呼び止められ、「おまえはこのチームのお荷物だ」と2時間、説教が続いたことも。

気にしないようにしよう、と思っていましたが、苦手意識が拡大し、上司の声がするたびに胃が痛むように。それから半年後、ついに会社に行けなくなってしまいました。

うつっぽくなり、夜も眠れなくなり、辞表を提出することにしました。

AさんもBさんも、新たな就職先を見つけました。