数百万人より数百人に届けることにインターネットを使うべき

——最近のYouTubeなりで稼ぐ流れとは真逆ですよね。

【東】いま1再生で0.1円ぐらいなのかな? そうだとすると、100万再生で10万円、1000万再生でようやく100万って感じだけど、それじゃ生活できるひと超少ないですよね。他方でウチの動画プラットフォーム「シラス」であれば65パーセントがテナントに入る設計になっていて、そうすると30万円を集めれば20万円入るんですよね。つまり1500円を200人が払えばいい。200人を集めれば20万円入る。ホントはインターネットってこういうふうに使うもので、なんで100万ビューで10万円なんだって思うわけ。

——それはものすごく思います。

【東】最近、ぼくの友人の渋谷慶一郎って音楽家が『ミッドナイトスワン』のサントラをやってて話題になっていてるんですけど、彼は今回あえて、一番売れる曲はCDでしか聴けないようにしてるんですよ。それでCDを自分で梱包して発送してるんだけど、そちらのほうがはるかに儲かるんだって。

撮影=西田香織

——サブスクは広がりはあるけど儲かるものじゃないですよね。

【東】結局、少人数のちゃんと支えてくれる人たちがいればいいんですよ。彼らはプラットフォームや広告代理店に金を落としたいわけじゃないから、その人たちといかにダイレクトにつながって、彼らの熱量でこっちがいいコンテンツを作るような生態系を作っていくかっていうことだと思うんです。でもいまのプラットフォームビジネスはそうじゃなくなってる。

SNSとワイドショーがお互いを参照しあうというダメさ

——テレビを否定したはずがテレビっぽい方向に行ってるというか。

【東】そうです。広告モデルだと内容もテレビに近づいていくわけです。だれもが思っていることだけど、いまはSNSとワイドショーがお互いを参照しあってどんどんレベルが下がっている。そういうなか、ぼくとしては数百人から数千人の人たちによっていかに自分たちの生活を支えるかを真剣に考えてシステムを作っていて、ゲンロンはそういう規模でやると最初から割り切っている。『ゲンロン戦記』も、そういう小さい経済圏を作るための成功モデルとして読んでくれたらいいと思っています。

——ボクも小さい経済圏の人間だからわかる話ばっかりでした。

【東】ありがとうございます。

——配信とかやってても課金にした瞬間に、すごい平和になりますからね。炎上させたい人たちは、本当に課金しないんですよ。

【東】そうなんですよ。だから、じゃあ無料で公開してていいことってなんだって話なんですよね。

——宣伝効果だけなんですよね。

【東】それも将来はどうなるかわかりませんね。いまだってフェイクとかポストトゥルースって言われてるわけで、これから10年20年たったときに、むろんSNSは存在し続けてるだろうけど、もう誰も信用しなくなって、SNSでいくら拡散しても実際の商品はピクリとも動かないっていう世界が来る可能性もあると思うんですよ。そしたら広告料も支払われないだろうし、廃墟みたいな存在になる。

結局のところ信用の問題なんで、無料コンテンツを人が信用しなくなる時代が来るんじゃないかなっていう気がするんですよね。たしかに再生はされてる、一瞬話題になってる、ただそれは結局なんにもならないよねと。ハッシュタグも、もうあきれられてきてる。たしかに検察庁法改正のときのハッシュタグは目新しかった、だから政治も動いた。